祭り囃子が聞こえる
その夏も暑かった。
ハヤトがカミさんのお腹の中にいた夏。うだるような暑い夏だった。
僕は当時2歳の娘と2人、近くにある大きな団地のお祭りに行った。
僕は黒い甚平さんを、娘は赤い金魚の浴衣を着て・・・・。
綿菓子を持った娘を肩車して人ごみの中を歩いた。
すれ違う人が娘を見る。結構注目を浴びている。でへっ、可愛いでしょ?僕の娘。なんて思いながら。
生ビールとイカ焼きを屋台のおじさんに注文した時だった。
「おおっ!あんた!頭が大変なことになってるぞ!」
ええっ!マジっすか?
娘は綿菓子を少しだけしか食べず、僕の頭の上に置いていたのだ。
そういえばたしかにモワモワと妙な感触はしていた。てっきり娘の浴衣の布地の感触だと思っていた。
綿菓子が溶けてべっとりと頭にくっついている。
フワフワのアフロヘアーになっていた僕。ソウルシンガーだ。
和製ジェームスブラウンだ! ゲロッパ!
帰宅後の惨状は思い出したくない。
祭り囃子を聴くと思い出す、あの夏の日。
肩車が出来る時期ってね、あっという間だった。
大変な事も多かったけれど楽しかった。
今日は滝山のお祭り・・・・
中学生になった娘は仲良しグループの友達と連れ立って出掛けて行く。
カミさんの浴衣を着て、精一杯のおしゃれをして・・・・・。
父親は寂しいけれど、本人は一番楽しい時か。
うーむ、我が娘ながら可愛い。心配でたまらん。
悪い虫が近寄ってきませんように・・・。
僕だって元をただせば悪い虫だったんだろうけれど。
本当に申し訳ない事をしたと今さらながら思う・・・・・?
義理の両親に対してはね、海より深く反省しているぞ?
悪い虫!いいか?近寄らないでくれ!お願いします。
虫がいい話だろうか・・・・・・。
ところで、「愛娘」って書いて何と読む?
読めない人が多いらしい。
お祭り
楽しいよね。
「愛娘」へ。
いっぱい楽しんでおいで。
早く帰って来るんだぞ!
親父の心はいつだって矛盾しているんだ。
それでイイのだ。