遥か彼方の昔、
僕が誰よりも知る、その少年の夏も終わった・・・。

シャーシャーと、シャワーのようにクマゼミの鳴き声が降り注ぐマウンドの上で、その少年の夏は終わった・・・。


手を叩きながら本塁を走り抜ける走者と、
深い位置でゴロを捕球しながらそのまま膝をついて泣きじゃくる二塁手の仲間を交互に見ながら、
少年の夏は終わった・・・。


クマゼミの鳴き声の向こう、


スタンドの応援席で、
少年と寮で同室の一学年下の後輩、ショージくんの号泣する声が聞こえた・・・。


ショージくんは少年の名前を叫びながら泣いていた・・・。


夏が終わる。
少年の夏が終わる。


マウンドの上、
その少年は泣いていなかった・・・。


それだけが今も、僕の救い・・・。


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あれから何度も夏は巡り、あの日の少年のような少年たちが今年も、
輝くダイヤモンドに立つ。

悲しさや、挫折を味わいなさい・・・。


完膚なきまでに叩きのめされなさい・・・。


打ちひしがれなさい。
打ちひしがれ、苦しみなさい・・・。


その痛みを心に刻みなさい・・・。


野球の少年たちよ・・・。


その痛みが君をつくる。


いつか必ず君をつくる。


がんばれ!
膝をついてもいい。


大丈夫だよ、
立ち上がれ。