しゃかいか見学
昨日無駄足になってしまった仕事の用事であらためて外回り。
道の混み具合があきらかに違う・・・。
これこそ平日の朝のラッシュだシュシュシュのシュ〜だぜ・・・。
息子が珍しく一日オフであった。
僕の外回り仕事に同行したいと言った。
どうこう言うつもりはない、同行してもよかろう。
社会科見学の一環として、どうこう言わず同行を許可する僕の動向。
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朝早く僕らは出発。
最初に銀行へ行き、振込みを済ます。
相変わらず僕の指だとタッチパネルの反応が鈍くてイライラするのだが、
どうだ、息子よ、
銀行のATMを操作する父ちゃんの姿は格好良いだろう?
背中で君に伝えておこう・・・。
父ちゃんは寅さんなんだけんど、タコ社長でもある。
息子よ、
いつの日か君も、
ATM前にいるご案内係のお姉さんに何も質問しなくても、な、
自在にATMを操る事の出来る男になってくれ・・・。
「あ?
そんな事は誰だって出来るに決まってるだろ。
父さんが出来るようになったのは最近じゃないか。」
うむ、イエス アイ ドゥだ・・・。
しかし、銀行の雰囲気って嫌だね、僕は。
み〜んなが自分の手持ちのカードを隠してるババ抜きみたいで嫌だね。
病院の次に嫌いな場所が銀行だね、僕は。
いつか、僕の手の内にあるババを引かせてやるぜ、銀行よ。
いいか、息子よ、
すべてこの雰囲気こそ社会なのだ。
見学しておけ!
それが社会科見学だ・・・。
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その後、ありとあらゆる取引先に同行二人。
お得意先の事務の女の子、Mさんから息子は、
「ええっ、ハヤトくん!赤ちゃんの時しか知らないからビックリ!」
な〜んて言われて頬を赤らめたりするシーンもあった。
仕入先G社、中国人女性のCさんにこれがセガレだと言うと、
「似テル、似テル、ソックリネ。」と言われた。
仕入れ先S社、インド人宝石商・トゥリくんに紹介すると、
「似ナイデ良カッタナ。」と言われた。
いいか、息子よ、
これが社会(かもしれない)だ。
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御徒町を歩く。
息子と歩く。
僕は、息子の姿を見ながら考えていた。
息子と同じ年代の頃の僕の姿を・・・。
もしも息子ぐらいの年齢にもう一度戻れるのなら、
僕は、僕の人生をもう少し大切に生きられるのかもしれない・・・。
でもそれは、もう叶わぬ事。
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雑踏の中を歩きながら、
人波を掻き分けながら、
いろんな人がいるだろう?って、
いろんな生き方があるだろう?って、
息子に伝えたかったんだ・・・。
どんな生き方をするか決めるのは自分自身だ。
ただ、自分の人生を慈しんでくれ。
それが親父の願いだ・・・。
雑踏の中のひとりひとりに、ね、
かけがえのない人生があるんだ。
それを尊重出来る人間にさえなってくれればいい・・・。
蒸し暑い一日だ。
息子と僕は自販機でジュースを買い、公園で休む。
日陰に敷かれたシートの上で、段ボールと共に眠る人の姿が見えた。
あの人たちを絶対に下だとは思うな。
あの人たちを跨いで歩ける男にだけはなるな。
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社会科見学。
社会科見学。
なあ、日本中の高校3年生のみなさんよ、
これからたぶん、
申し訳ないのだけれど、もっと、
社会は歪み、混沌へと向かうだろうと思う。
君らが生きる時代は困難の連続である事は間違いない。
(ゴメンな、それは、僕らの世代の責任だね。)
だが、その向こう側には、
もしかしたら明るい何かがあるのかもしれない。
それを信じて生きる事が出来る人間になって下さい。
自分の人生を慈しみながら、ね、
将来のビジョンを選んで下さい。
いいかい?忘れないでいて下さい。
人間は、誰だって、どんな人だって、
シアワセになるために生まれてきたのだから。
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僕と息子は、小さなラーメン屋さんでメシを食って帰った。
小さなラーメン屋さんだったのだけれど、
オジサンとオバサンはシアワセそうにラーメンを作り、運んでいた。
以上。
社会科見学終わり。