あきない

大きなスーパー、アイワイ(IY)の食品売り場で、な、
北海道の珍味の数々を試食付き販売していた・・・。
美味しそうだぞ、美味しそう、いいないいな羨ましいな・・・。


北海道ってさ、何でもかんでも美味しいもんな。
果てしない大空と広い大地のその中で育まれた食材は素敵。


みりん干しやらタコわさやら、
シシャモや松前漬けやイクラは幾ら?なんちゃって。


「はいどうぞ」と、オジサンが爪楊枝に刺した試食品を次々と僕ら夫婦にくれた。
ありがたいな、ありがたい、タダより安い物は無い。


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その時、小学校の高学年位の男の子2人が、な、
「試食させて下さい。」ってそのオジサンに頼んだのだけれど、
「お母さんかお父さんと一緒に来てね。」と言って、
その少年たちを追っ払ったのだった・・・。
ヒドイんだぜ、シッシッてやったんだよ・・・。


がっかりしながら恥ずかしそうに去る少年たちの背中を見ながら僕は、
欲しかった氷下魚(コマイ)もスルメも欲しくなくなった・・・。


「どうする?買う?」とカミさんは僕に聞いたが、
僕は、いらないって答えた。


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子供だけで試食を食べに来るのは反則かもしれない。
でもね、その子供たちにも食べさせてあげてもいいんじゃないか?
家に帰ってお母さんに、さ、
「アイワイの試食、すごく美味しかったよ。」って言ってくれて、
そのお母さんが夕方の買い物の時に立寄ってくれるかもしれないじゃないか・・・。


第一、売るほど余ってるんだろ?
商売人がケチだと思われたらオシマイさ・・・。


1、その様子を目撃した僕ら夫婦が買わなかった。
2、その子供たちが逆に帰宅後、「試食を断られた。」ってお母さんに言うかもしれない。
3、そのお母さんが近所のママ友に、「ウチの子が試食を断られたのよ。」って言うかもしれない。
4、ママ友が他のママ友に、「試食を断るらしいわよ。」って言うかもしれない。
さすがは海産物だけあって尾ヒレがどんどん付き、
5、ママ友のママ友のママ友のママ友に伝わる頃には恐ろしい事になりますよ。


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試食を断られた少年たち。
オトナになってもその記憶は消えないんじゃないか・・・。
将来、彼らが奥さんとスーパーへ買い物に行き、
そこで試食をする度に思い出してしまうのではないかと思う・・・。


あの北海道の珍味屋さんのオジサンはアウト!
ヒ〜ザウッ!
商売人としてアウト!
ヒ〜ザウッ!(正しい発音は、He is Out!)


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一方、
スーパーマルフジに月一回来る「伊豆の干物屋さん」のオジサンがいるのだけれど見事!
このオジサンはすごいんだよ、寅さんみたいに主婦の皆さんを気持ちよく買い物させちゃうんだ・・・。


「ちょっとこれ食べてみて。」って、
目にも留まらぬ早業で試食を刺した爪楊枝を渡すテクニックは達人の域なり。


僕は弟子入りしたいと毎月思っちゃう・・・。