坊主めくり

先週、床屋に行った。
僕は自宅で仕事をしているのでお洒落には関心がない。
身だしなみにもあまり気を使わない。

だが、髪の毛が伸び放題のボサボサになってしまい、カミさんと娘に指摘され背中を押されるように床屋に行った。

短く切って伸びるまでそのまんま。それがいつものパターンだ。行きつけの床屋は、ない。
自転車で適当に走って空いているお店に入る。
駅の近くまで行って、初めての理容店に入った。

「スポーツ刈り、お願いします。」と、おじさんに頼んだ。

初冬の昼下がり、暖かい店内。散髪中にいつも寝てしまう。気持ちいいんだな、これが。
ハッと眼が覚め鏡を見る。
短い!これじゃスポーツ刈りじゃなくって坊主だ!
ただでさえ僕は人相が悪い。本格的な悪役顔だ。
お洒落より駄洒落の僕でさえ、この坊主頭にはマイッタ。

太陽にほえろ で松田優作はお腹をおさえて「なんじゃコリャー!」と言ったが、僕は頭をおさえて「なんじゃコリャー!」と叫びそうになったのをグッとこらえた。
鏡の中、青ざめた表情の僕。僕の背後に泣きそうな顔のおじさん。

すかさずおばさんが横から、「お客さん、似合いますねー。かっこいいですね。」
と声をかけてくれた。ナイスフォロー!おばさん。いいバッテリーだ!夫婦愛だ。
お嫁さんらしき人も、「頭のカタチがいいから、短いほうが似合いますね。」
素晴らしきチームプレー!

行きつけの床屋、ここにしよう!年内にもう一度来よう!
けっこうワシも単純だなー。

外に出るとすごく寒かった。なにしろ法事に出掛ける坊さんクラスの短さだ。
百人一首の中に僕がいたら、確実にめくられてしまうだろう。

家に帰るとカミさんと娘が爆笑した。
ハヤトは「おう、いいじゃん、」と言ってくれた。息子よ、ありがとう。

翌日、土曜日、ドラゴンズの練習。
「お前!また悪いことやったのか?」ひどい、小川監督。

その後、僕は鏡を見ていない。
男は中身で勝負、なのだ。太っているが、やせ我慢。

ただ、夏にこうしておけばよかったなー。と思った。