プライド

hayatonooyaji2005-12-01

夏の日の試合でのこと・・・。


スクイズが決まった!スクイズが必要な場面かどうかは疑問だったけれど・・・。
とにかくスクイズは成功した。
3塁にいた走者は、見事に捕手のブロックを掻い潜って、生還・・・。
ベンチに戻った走者の様子がおかしい・・・・。
また怪我か!一瞬僕の胸に不安がよぎる・・・。


「スパイクの紐が切れた!」ベンチから聞こえてくる声に胸をなでおろした。
怪我ではなくて良かった。やっと肘の怪我から復帰出来たんだ。
走者だった子供の母親がしゃがみ、切れた紐を結んでいる。
でも上手く出来ない。どうしても無理だった・・・・。
その間に彼らのチームの攻撃は終わる・・・・。


「タイムをお願いします。」


試合が止まる。走者だった男の子のスパイクは、まだ直らない。
ベンチの中で監督が立ち上がり、控えで座っていた選手に声を掛けた・・・・。


「おい!オマエ、靴のサイズいくつだ!」


夏だったけれど・・・その時冷たい風が吹いた。
グラウンドに、僕の心に・・・、哀しい風が吹いた。
大人たちの追従笑い・・・・。悲しくて冷たい笑い・・・。
靴を脱げと言われた選手のお母さんは応援席にいない・・・。


彼は一瞬、空を見て、照れたような顔をして微笑んだ。
そして下を向いて微笑んだまま、自分のスパイクを見つめた・・・・。
悲しい微笑み。誇り高き野球小僧の悲しい微笑み・・・・。


僕は胸がつぶれそうになる。
今朝、その男の子はどんな顔をしてユニフォームを着たんだろう?
きっと晴れがましい気持ちでね、スパイクを履いたに違いないんだ。
「お母さん!行って来まーす!」ってね、元気に家を出たに違いないんだ。
僕は涙が出た・・・。


悲しいチーム・・・・・・・・
悲しい野球・・・・・・・・・
奪う大人たち・・・・・・・・


「僕の紐を使って下さい!」
ベンチの中のお父さんコーチが機転をきかせた。ナイス!Sさん。
彼のプライドは、お父さんコーチに守られた・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


夢を与えてくれる大人だって多勢いるんだけれど・・・。


人生いろいろ
大人もいろいろ

どうか、子供たちの側に・・・・・。
お願いします。