恒例の連載。朝日新聞多摩版に於いて。
そう。夏の甲子園へ向けて地区予選が始まる前にね、球児たちを励ます内容の心あたたまる読み物なんだけれど・・・。
今年は少し違っていた。首をかしげざるを得ない話からの連載スタートだった。
連載のタイトルは、「のりこえて今」・・・だったと思う。


ある高校球児。環境の整わない都立高校で最後の夏を迎えようとしている。
校舎とマンションの間の僅かなスペースにて、投球練習を続けている。
彼は中学生時代、栄光に輝いた投手だった。
いくつもの野球強豪校から引く手あまただったらしい。
自信に溢れて進んだ名高き名門校・・・。
だが、彼の自宅からね、練習場は遠かった。
始発電車に乗っても早朝練習に遅刻してしまうような距離だった。
彼は通学を断念。
現在の都立校へ転入した。
そして迎える最後の夏。
この記事のラストは、こんな文章で締めくくられていた・・・。


「それでもプライドは捨てない・・・(中略)・・・。
 彼は投手として登板するつもりだ。・・・
 個人記録を狙う・・・。」


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僕は想う。すこし哀しい気持ちになったんだ・・・。
その少年に伝えてあげたい・・・。


あのね、今の君の考え方は少し違っているよ・・・。
君は一人で試合を闘うのかい?
違うよね、君と同じユニフォームを着た仲間たちと一緒に闘うんだよね・・・。
みんなで「心」を結ぶんだ。そんな野球をしようよ。
まだ間に合う。君みたいなスゴイ野球小僧ならきっと・・・。
がんばってほしい。
チーム一丸で闘い抜いてほしい。
どんなにボロボロの負け方だっていいじゃないか。
仲間を信じるんだ!個人記録なんて二の次だよ。
野球は、ね、僕たちの愛する野球は、ね・・・、
絶対に君に、それ以上の宝物を与えてくれるからさ。


あえて最後の夏だなんて書いた。
でもね、僕は君のために祈る。
最後の夏にしてほしくないんだよ・・・。


来年も再来年も、君の夏は来るから・・・。
絶対に夏は来るから・・・。
野球の神様にさ、しがみついちゃおうぜ。
そんな姿をこそ、僕は君のプライドにしてほしい。


今年の夏、燃えようぜ!
がんばれがんばれ!


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