泉のほとりで素振りをしているハヤト。
こんな所に来てまで素振りもあるまいにアルマーニ・・・なんちゃって・・・ウヒ。
不思議な色をした水を湛えた泉・・・。
ここでティー練習は無理かもしれん・・・。


「あっ!」ハヤトの声がした。
ボッチャーン!
汗でグリップが滑り、バットを泉に落としてしまった・・・。
ズブズブと沈んで行くバット・・・。
なんで木のバットが水に沈むのだろう?とても驚いてしまった。
本当なんだよっ!僕は見たんだ!


しばらく後、ゆらゆら・ざわざわと水面が揺れる・・・。
不思議な色をした水が、さざ波立つ・・・。


水の中から女神さまが現れた!


おおおっ!白いノースリーブのドレス。
黒木瞳さんに似ている!
僕の目はハート型になった。


「これ、野球少年よ・・・。
 そなたが落としたバットは、この純金(K24)のバットですか?
 それともこちら、プラチナ(Pt950)のバットですか?」


おいっ!ハヤト!プラチナバットだって言え!
私のバットはプラチナ製に御座いますって、な!


「僕のバットは木のバットです。」


「まあ、なんて正直な野球少年なんでしょう・・・。」


くっそー!融通のきかない正直小僧め!
まあいいか・・・、木こりだって正直に答えたから金の斧をもらえたんだった・・・。


「木のバットはありませんでしたか?」


「え!・・・う、うん、見なかったわよ。
 金のバットじゃダメ?これならあげるわよ。
 ごめんなさい。探してあげる時間は無いのよ・・・。」


「はい。僕のバットは木のバットです。
 知らない人から物は貰えません!」


「残念だわ・・・。
 じゃ、私はこれで・・・。
 練習がんばってね!」


再び水の中へ戻る女神さま。
僕は叫んだ!待って!待ってくださ〜い!女神さま〜っ!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ここで目が覚めた。
夢か?・・・夢だったのか・・・。
ものすごくリアルな夢だった・・・。
寅さんの映画のオープニングのようだった・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


しかしなぁ・・・。
融通のきかない真面目人間のハヤト・・・。
そのまんまの夢だったので、とてもリアルだった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


先日、小学校の卒業アルバムが配布された。
ハヤトのエピソードをひとつ・・・。


「クラス全員への質問コーナー」のページ。
アンケートの中に愚問があった。


「Q・もし道で、1000万円拾ったとしたら、あなたはどうしますか?」だと・・・。


「貯金します。」なんて答えが多い。
でもね、株とか投資信託なんて答えは無い。ちょびっと安心。


え?ハヤトの答え・・・。


「警察に届ける」・・・ですと。
う〜む。面白くない答えだけれど、それでいいんじゃないだろうか・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


真面目人間・・・。ハヤト・・・。


なんでだろ?親父は不良なのに・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・