希望の轍
3塁側、ベンチ前に駒大苫小牧の野球小僧たちが出てきた。
あまりにも理不尽なカタチで奪われた春を取り戻すために?、
否、違うんだね。彼らはただ純粋に白球を追い続けてきたんだ。
灼熱の甲子園に立つ。
うれしそうな顔で立つ。
北海道の野球小僧・・・。
甲子園球場が心を持っていればね、彼らにきっと言うだろう・・・。
「ようこそ!」
そして、「おかえりなさい!」って・・・。
僕が見たいのは勝敗じゃないんだ。
彼ら高校球児が全力で夏を駆け抜ける姿なんだ。
高校生・・・。
高校生の野球小僧たち。
大きくて格好いいなぁ・・・。
見えるぞ!僕には見える!
小学生の頃の君たちの姿が・・・。
生まれて初めてのユニフォームを着た時のね、うれしそうな君たちの顔が見えるぞ!
僕は込み上げてくるんだ。
泣く。
汗拭きタオルで拭う。
涙を拭う。
ベンチ入りメンバーも、スタンドで声援を送るメンバーも・・・。
6校、全ての野球小僧たちに言いたい・・・。
ありがとう。
がんばってるね。
本当にありがとう・・・。
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小学生、中学生の野球大好きな子供たちに・・・。
甲子園に出場している野球小僧たち・・・、すごい?
なんだか特別な野球のエリートたちに見える?
いーや、ぜんぜんすごくない。特別なんかじゃなかったよ。
いつも僕たちが見ている野球少年と同じだった・・・。
ひたすら野球が好きなみんなと同じだった・・・。
高校生だもんね、ちょびっと大きいだけだった。
みんなと同じ夢を持っているだけのお兄さんたちだったぞ・・・。
すごい!って言うのはね、きっと夢の大きさなんだ。
大きい夢を持つ事を、すごい!って言うんだ・・・。
夢・・・、一番大切にしようよ。
夢・・・、大きく育てようね。
才能?
それはね、夢の後から追いかけて来るんだよ・・・。
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甲子園。
すごくいい。
野球の聖地だ・・・。
帰りたくない!
ずっとここにいたい・・・。
ハヤト!
先に電車で帰れ!
母さんと姉ちゃんによろしく。
父さんは甲子園で暮らす。
じゃあな。