野球少年たち

hayatonooyaji2006-09-19

優しい男なんだ。
本当に優しい男なんだ・・・。
その日、マウンドに立っていたのはね、2年生のアキラくん。


恵まれた体格。
球だって速い。
そして重い。
我らがフェニックス、「右」のエース・・・。


ベンチの中からも、各ポジションからも、1年生たちが彼を見つめている。
アキラくんの姿は、とても頼もしく見えた事だろう。
お〜い、1年生たち。
しっかりと見ておくんだぜ。
優しい先輩が自分の力でね、強さと自信を掴む姿を・・・ね。


知ってほしい。
まだまだ小さくて幼い君たちなんだけれど・・・、
優しいって事はなぁ、本当に強いって事なんだよ。
アキラくんがマウンドにいる。
優しいアキラくんがマウンドにいる。
君たちはチームメート・・・。
優しいアキラくんがね、優しくて強いアキラくんになる試合・・・。
君たちは一緒に闘っているんだ・・・。


がんばれ野球小僧!
がんばれアキラくん!
がんばれ21人のフェニックス(不死鳥)たち!


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「たくさん点を取っとくれよ〜。1年生!点を取っとくれよ〜。」
スタンドでね、アキラくんの親父さんはずっと言っていた。
僕は、アキラくんの親父さんの膝をポンと叩いて唄った・・・。
クレイジーキャッツの唄なんだ・・・。


〜あんたの息子を信じなさい、ホレ信じなさい、ホレ信じなさい〜


でもね、唄いながらドキドキしていたのは僕だ。
実直なアキラくんの親父さんの心、
想いを重ねると涙が出そうになる・・・。


クマさん、クマさん・・・。
やっぱり僕たち親父もね、チームメートなんだね・・・。


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先取点はフェニックス。
1度は逆転された・・・。
直後、打線が繋がり再びフェニックスがリード・・・。
息詰まる展開の試合になった・・・。


ショート、二ッちゃんの前で、球がイレギュラー・・・。
ニッちゃんは強かった。偉かった。
身体に当てながらもね、球を後ろにそらさなかった・・・。


けれど打者走者はセーフ。
ピンチ・・・。


アキラくんが二ッちゃんに声を掛けている。
スタンドで応援している僕らにも聞こえた。
ハッキリと聞こえた・・・。


「ドンマイ!」


優しい男が、優しくて強い男になった瞬間!


もしも、この試合が映画だったらね、おそらくここでBGMが流れ出すだろう。
曲は、河島英五さんの「どんまいどんまい」だ・・・。


・・・背番号1のあの人にだって、眠れない夜はあっただろう
   お前なら出来るさ跳ね返すんだ、ガーンと一発!かっ飛ばせ!
・・・焦っちゃダメだぜ先はまだ長い、42.195キロだぜ
   走れ走れゴールに向かって、たどり着いたら泣けてくるだろう
   どんまいどんまいクヨクヨするなよ
   どんまいどんまいクヨクヨするなよ・・・


その後、アキラくんの投球はね、冴えに冴えた。
公式戦1つ目を勝利で飾った・・・。


9月17日現在、清瀬ポニー・フェニックスは、4戦全勝。


乗り越えるべきドラマを背負いし野球少年たち。
ラクルの予感がする・・・。


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試合終了直後、アキラくんの親父さんの姿が見えなかった。
僕たちが座っていたスタンドを組んでいた足場の下、
たった一人でね、息子とチームメートたちの姿を見つめていた・・・。


親父さんの目に光るものがあった・・・。


PONYの旗、ひらひらと舞う秋の風の中で・・・。


子供たちは誰もが成長している・・・。