月が見えたかい?

月・・・。
月は見えるかい?


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夜、ハヤトは一人で素振り&ランニング。


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月は見えるかい?


深呼吸をして見上げた空にさ、月は見えるかい?


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うれしそうにバットを持つ・・・。
そうだな、うれしいに決まってるよな・・・。
シアワセだろう?
そうだよ、今の気持ちを大切にすればいいんだよ・・・。
その気持ちこそ、野球が出来る喜びなんだよ・・・。
忘れてはいけないよ・・・。


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月は見えるかい?


なぁ、ハヤトよ、
いつの日か君に、僕は大杉勝男さんの物語を聞かせてやろう・・・。


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素振り再開2日目。
まだ手首は固いのだけれど、オッケーだ・・・。
ア・オ・イ・ク・マ・・・。
アセラズ・オコラズ・イバラズ・クサラズ・マケズ・・・。
ゆっくりな、ゆっくりな・・・。


バットを持つだけでさ、こんなにもシアワセな気持ちになれるなんて知らなかっただろう?


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野球が出来るヨロコビ。
野球が出来るシアワセ。


僕らの国はね、豊かな国だと言われてる。
(残念ながら、なんだかそれは過去形になりつつあるのだけれど・・・。)


野球が出来るヨロコビやら、シアワセやら、
日本の野球少年たちの中でね、どれ位の少年が考えているんだろう?


ふと僕は、そんな事を考えた・・・。


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月は見えるかい?
野球少年の何人が月を見上げているかい?


その月に向かって打っていた男がいたんだぜ・・・。
大杉勝男さんを知っているかい?


豊かな国の野球少年たちは、大杉勝男さんを知らないのか・・・。


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世界には、まだ、きっといる・・・。
たったひとつのボールや、たった1本のバットや、
グローブや、仲間と揃いのユニホームを夢見ている子供たちが・・・。


そんな国にもポニーリーグはあって、
そこで活躍する少年たちはすごいんだそうだ・・・。


ずっとずっと夢に見ていた野球をしているんだものな・・・。
野球が出来るシアワセを噛み締めているんだろうからな・・・。


強いだろうね、本当の意味で強いんだろうね・・・。


世界で戦うとは、そんな彼らとの戦いなんだね・・・。


野球とは、やっぱり学ぶものなのだと僕は思う・・・。


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ポニーリーグの理念を誇りに思う・・・。
ひとりの父兄として・・・。


「国境なき応援団」を結成しなければなるまい。


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月が見えたかい?