午後の紅茶と総監督。

それは4月、栃木への遠征があった日のこと・・・。


僕は車出しで、それからカミさんはお茶当番でね、遠征に参加していた・・・。


両翼110メートル・・・。
とってもとっても素晴らしい球場でさ、僕はただ、ワクワクしっぱなしだった・・・。


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「わっはっは!
 あのう、お茶をください・・・。」ってね、総監督がカミさんに声を掛けた・・・。


「は〜い、コーヒーですか?」


総監督は1本のペットボトルを指差して言った・・・。


「これがいいな、・・・午後の紅茶・・・。」


時間はね、たしか午前の9時頃だった・・・。


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総監「わっはっは!午前中なのに午後の紅茶!」


カミさん「・・・・・・・。」


総監「午前中なんだけれど午後の紅茶・・・。」


カミさん「・・・・・・・・・・・・・。」


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おい、カミさんよ、それ、たぶん、ギャグだぞ・・・。
笑ってあげるべきだと僕は思う・・・。


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総監「・・・午前中なのに午後の・・・。」


カミさん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


総監「・・・午前中なのに・・・紅茶。」


カミさん「・・・・・・・・・・・・・・。」


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おい、カミさんよ、頼むから笑ってあげて頂戴な・・・。
午前中なのに午後の紅茶を飲んじゃうぜベイベ!って感じのギャグなんだろうって僕は思う・・・。


総監「・・・午前中なの・・・に、・・・。」


カミさん「氷をもっと入れます?もっと冷たくしましょうか?」


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おい、カミさんよ、充分にもう冷たいぞ・・・。
もしかしたらな、総監、傷ついちゃったかもしれないよん・・・。


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総監「・・・・午前中なのに・・・午後の・・・。」


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僕は、島田総監督が好きだ・・・。
野球の好きな子供たちを心の底から愛してくれる総監が好きだ・・・。


総監のご子息がね、僕の一つ年下・・・。
言ってみれば総監はさ、親父みたいだ・・・。


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3年生の父母の僕らにとって、総監は身近で頼もしい存在なのだけれど、
総監自身の野球について、僕が初めて聞いたのはね、3月の沖縄だった・・・。


総監がノンプロの名捕手として、現役でプレーしたのは28歳まで・・・。


昔、そう、今のね、社会人野球とはある意味で異質の、そう、
誇り高きノンプロの話しを僕は聞いた・・・。


「わっはっは!・・・野球は、まさしく人生だったな・・・。」


知りたい・・・。
僕は、かつてのノンプロたちの話しをもっと聞きたい・・・。


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「仕事だってあった・・・。
 そして野球があった・・・。」


真の野球人たるプライド・・・。


夢と仕事と野球・・・。


なんと心豊かな人生なのだろう・・・。


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こんなにも今、
野球が好きな中学生のね、孫みたいな少年たちをなぜ?
総監督は抱きしめるように愛してくれているのか?


それをもっと知りたいと思う・・・。


明日、また僕は総監と一緒に、沖縄へ行く・・・。


たくさんの大切な心を学ぼうと思う・・・。


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親父みたいな総監督の一番近くで僕は、
野球の風を深呼吸しようと思う・・・。


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総監「・・・午前なのに午後の・・・、・・・紅・・茶・・・。」


カミさん「・・・・・・・・・・・・・。」


でもね、総監は、ゴクゴクゴクって美味しそうに飲んでいる・・・。


楽しい日々だ・・・。
僕ら夫婦はね、この野球の日々が愛しくてたまらない・・・。


少年野球はきっと豊かだ・・・。


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総監「・・・午前中なんだけれど、午後の紅茶・・・。」


カミさん「・・・・・・・・・・・・・・・。」


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おい、カミさんよ、やっぱりそれギャグだ・・・。
たぶん、間違いない・・・。


午前中なのに午後の紅茶を自分は飲んじゃうんだよ〜ってね、すごいギャグだぞい!


笑ってあげておくれ・・・。


午後の紅茶を午前中に飲んじゃうんだもん・・・。


すごいよ、やっぱり総監督・・・。


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カキーン!
楽しい日々・・・。