わんこ。

沖縄の石川野球場でね、僕は、ある犬を見かけたんだ・・・。
リードも首輪も着けていなくて、ゆっくりゆっくりと歩いていた・・・。
どうやら野球帽をかぶったお爺さんが連れている愛犬なのだろうけれど、
そのゆっくりとした歩みは、この冬に死んでしまった僕の老犬と同じだったんだ・・・。


そのゆっくりとした歩みが切なくて、哀しくて、愛しかった・・・。
加齢で白濁しつつある瞳も、慈しみに満ちたものであった・・・。


野球帽をかぶったお爺さんの歩みと、
ゆっくりゆっくり歩く犬の歩み・・・。
沖縄の緩やかな時間の流れの中で、ね、
それはまるで映画の中の1場面みたいだった・・・。


僕は、僕の死んでしまった老犬を思い出していた・・・。
こうしてヤツも、ゆっくりゆっくり歩いていたんだった・・・。
老犬はゆっくり歩いていたけれど、
僕はね、ゆっくりと歩んでいてあげたのだろうか?


それを想い、胸が締め付けられた・・・。
もう犬は飼うまいと思った・・・。


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