プロローグ。
「オ父サ〜ン!キャッチボールシヨウ!」
聞こえるよ。
はっきりと聞こえるよ。
小さかった頃の君の声ならね、今でもはっきりと聞こえるよ。
なあ、ハヤト・・・。
野球ってさ、やっぱり楽しいよなぁ・・・。
「早ク!早ク!キャッチボールシヨウヨ!」
聞こえるよ。
はっきりと聞こえるよ。
父さんの耳にはね、今でもはっきりと聞こえるんだよ。
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〜10月1日は都民の日だった。
なんだかちっちゃな休日だった。
近所の公園で、キャッチボールをしている親子の姿を見た。
若いお父さんと、5歳くらいの男の子・・・。
とてもとても楽しそうにキャッチボールをしていた・・・。
それはとても眩しくて、
とても羨ましい光景だった・・・。〜
どうだい?小さな男の子・・・。
野球ってさ、楽しいでしょ?
ずっとずっと忘れないでいてね・・・。
ワクワクしたり、ドキドキしたり、
捕りそこねたボールを追いかける時の風の音・・・。
それを忘れないでいてね・・・。
君の野球の物語が始まったんだね・・・。
がんばれがんばれ・・・。
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夢の中に小さなハヤトが遊びに来てくれた・・・。
座敷わらしみたいにね、時々僕に逢いに来るんだよ・・・。
「オ父サン・・・。」って本人は言ってるつもりなのだろうけれど、
「オ父タン・・・。」って発音するほど小さなハヤトが今日は来た・・・。
久しぶりの事だ・・・。
ストライク!アウト!
空振り三振・・・。
わっはっは!残念だったね・・・。
いつか打とう!いつの日か打とう!
打てたらきっと、もっともっと野球が好きになれるね・・・。
バットってさ、細いんだもん・・・。
ボールってさ、ちっちゃいんだもん・・・。
打てるって事はさ、きっとスゴイ事なんだよね・・・。
仕方ないさ・・・。
空振り三振で泣いちゃってどうする・・・。
だったら練習をしよう・・・。
父さんが楽しい練習を考えるよ・・・。
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楽しかった・・・。
楽しい日々だった・・・。
あれから9年・・・。
僕はシアワセだった・・・。
ハヤトがシアワセだったかどうかは、ね、僕には関係ない・・・。
僕がシアワセだったのだからそれで良し。
めでたしめでたし・・・。
野球が好きな小さな子供たちを僕は愛しく思う・・・。
大好きな野球で泣く子供の数をゼロにする・・・。
それが現在の僕の夢だ・・・。
否、夢なんかじゃなくってさ、それが将来の僕の使命だ・・・。
おこがましくて恐縮なのだけれど・・・。
楽しいんだ・・・。
野球は楽しいんだ・・・。
出会う全ての野球少年たちに僕は、
エールを贈り続ける者でありたい・・・。
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僕はエピローグを語らぬ・・・。
プロローグを語り続ける男だ・・・。
人生に美しいエピローグなんてあってたまるか!
ってね、叫んじゃう・・・。
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何度でも僕は言う・・・。
野球は楽しいんだ・・・。
がんばれがんばれ!
野球が好きな全ての少年たち・・・。
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明日、コルト大会の初戦・・・。
楽しもうな・・・。