娘が生まれた日・・・。


今、17歳になった娘が生まれた日・・・。


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ひょっこりと祖母は、
産院にいたカミさんを訪れたそうである・・・。


次第に間隔が短くなる陣痛が不安で、
泣きそうになっていたカミさんの所に祖母は来たのだった・・・。


祖母はカミさんのベッドサイドの丸イスに腰掛けて、
ニコニコと笑いながらカミさんのお腹を撫でて言ったそうだ・・・。


「大丈夫よ、大丈夫・・・。
 何も心配しなくても大丈夫よ・・・。」


カミさんは祖母の顔を見て、
本当に安心出来たのだと言う・・・。


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娘のアルバム・・・。
お七夜・・・。
お食い初め・・・。
七五三・・・。
節句・・・。
幼稚園から小学校時の運動会・・・。


それぞれの写真の中の隅っこで、ね、
祖母は、おとなしく優しい顔で笑って写っている・・・。


僕は、おばあちゃん!って声を掛ける・・・。
返事など聞こえないのだけれど、僕は、声を掛ける・・・。


優しい人だった・・・。
暖かい人だった・・・。
大切な人だった・・・。


僕らには・・・。


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祖母の通夜、告別式を終える・・・。


本当の悲しみや、辛さが僕らを襲うのは、きっとこれからだ・・・。


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弟から、何度か電話が来る・・・。
普段なら僕は、弟からの電話には出んわ・・・、なのだけれど、出る・・・。


「兄貴よ・・・、
 近くにいるんだからさ、オフクロを頼む・・・。」と、弟は言う・・・。


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僕らは、ね、
本当に大きな存在を失ったんだ・・・。


おばあちゃん・・・、
僕らをまだ、少しだけ見守っていてほしい・・・。