「・・・さん、父さん・・・、父さんってば、」
朝、そんな息子の声が聞こえて僕は起きた・・・。


ムニャムニャ、な〜んだ、せっかく昨日は「親父」と呼んでくれたのにな・・・。
今朝は「父さん」に戻っちまった・・・。


「父さん、車の中のガムを一つくれる?」


お、おう、いいよ・・・。
一つだなんて言わずにな、たくさん持って行け・・・。
父さんはもうちょっと寝る・・・。
気をつけて出掛けるんだぞ、じゃ、おやすみ・・・。


「おやすみ・・・、行って来ます。」


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息子が部屋を出て行った後、僕は布団を頭までかけて、もう一眠り、グ〜スカピ〜・・・。


何で「親父」から「父さん」に戻ってしまったのかとな、僕なりに考えると、
頼み事なんかの場合には、これからだって「父さん」なんじゃないかな〜って思う・・・。


微妙な立ち位置だな、僕は。
したがって昨日制定した親父記念日は撤回。


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ところで、バイ・ザ・ウエ〜・・・。


僕自身は、いつから僕の父親の事を「親父」と呼ぶようになったんだっけ?
思い出しつつ考えるのだけれど、果たしていつからとは言えないような気がする・・・。
高校生の頃だったろうか?
成人してからの頃か?
それこそ僕も然り、少しずつ「父さん」から「親父」へと、父親に呼びかける言葉を変化させていたのだ・・・。


だからきっと、ね、「親父記念日」なるものはこの世に存在しない・・・。


それでいいや・・・。
自然体でいる事が大切なんだろうな・・・。


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枕元の時計を見る・・・。
午前5時少し過ぎ・・・。


階下から漂う味噌汁の匂いがたまらなく良い・・・。


カミさんが息子をせかす声が聞こえる・・・。
あわただしい朝の様子。


平凡な一日の始まりを僕は、たまらなくシアワセに感じる・・・。
何気ない一日の始まりを僕は、たまらなく愛しいと想う・・・。


そんな気持ちでもう一眠り・・・。
ムニャムニャムニャ、
グ〜スカピ〜・・・。


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