もどり雪。

朝起きて、雨戸を開けて呆然とする・・・。
窓の外に広がるのは、一面の雪景色だった・・・。


思わず僕は目をパチクリさせた・・・。
夢か?
たぶん夢だ・・・。


目をパチクリさせてみても銀世界・・・。
まるで津軽海峡冬景色・・・。
白銀は招くよ。の世界・・・。


頬っぺたをつねってみる・・・。
痛い!イテテテ、夢じゃないぞ・・・。


雪が積もっているのだ・・・。


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43年生きて、桜が散った後に雪が積もった光景を見るのは初めてだ・・・。


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これを、「もどり雪」と呼ぶのだそうだ・・・。


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なんだかな、演歌でも作詞してみようか・・・。
我ながらナイスアイデアだと言えるだろう・・・。


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「もどり雪」という言葉からインスパイアされたイメージを歌詞にしてみよう・・・。


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うんうん、そうだな〜・・・。
ふむふむ、え〜っとな〜・・・。


おっ、思い浮かんじゃったもんね。


別れた恋人がな、傷付いて戻って来たってストーリーはどうよ?
なかなかいいんじゃね〜か?


物語の舞台は、そうさな、やっぱり東北だろうな・・・。
そうそう、ハズノヘなんていいかもしれん・・・。


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男歌にするかな?女歌がいいかな?
やっぱり男歌だろうな・・・。


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主人公は、居酒屋のマスターだ・・・。
世のあらゆる辛酸をなめ、横顔に影を持ちながら静かに生きる男だ・・・。
ちなみに、その男の年齢は43歳・・・。


恋人は、な、う〜ん、年の頃なら30ちょっと過ぎ。
やはりどこかしら哀しさを漂わせるスリムな美人にしておこう・・・。


二人は寂しい港町で、小さな居酒屋を営んでいたのだけれど、
ささいな出来事をきっかけにして女は街を出て行く・・・。


うん、なかなか泣かせる物語になりそうだ・・・。


そして季節は流れ、
女は再び港町に戻る・・・。


男は何も言わず、何も問わず、黙って女を迎える・・・。
その時、春の空に雪が舞っていた・・・。
もどり雪だった・・・。


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おおおっ!
すごく素晴らしい物語じゃないか?
マジでこれ、作詞してみよう・・・。



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季節外れの雪景色の朝、
なんだか僕って親父は詩人・・・。