マリア

息子よ、君が寝た後、
試合用のユニホームに母さんが背番号を縫い付けていた・・・。


息子よ、その時の母さんの表情は、な、
君や、お姉ちゃんが随分と幼かった頃に時折見せた笑顔と同じだった・・・。


とてもシアワセそうな顔をしていた・・・。
母さんをこんな笑顔に出来る君を、少しだけ僕は尊敬しよう・・・。


どうやら、
父親の気持ちと、母親の想いは、まったく違うものなのだな・・・。


クリスチャンじゃない僕は、マリア像の姿なんてすぐには思い浮かべられないのだけれど、
一針一針を心を込めて縫っている母さんの姿は、それに似ているんじゃないかと父さんは思ったぜ・・・。


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もうすぐ僕らの子育ては終わる・・・。
濃密で柔らかで、愛しい日々であった・・・。


否、過去形にするのはまだ少しだけ早いな。


そこまでの時間を僕は、精一杯に慈しもう・・・。


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「本当の意味で野球を好きになろう。」


息子よ、高校の野球部に入部して初めての監督からのプリントに、な、
そう書かれていた言葉に対する答えは見つけられたか?


残り1年足らずの間中ずっとずっと、
その言葉の真意を考え続けるんだよ・・・。


野球で出会った全ての人に、
感謝して感謝して感謝して感謝しながら走れ!


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