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大叔母の通夜。
戸田斎場。
夕刻の冷たい風の中で深呼吸をする。
生まれてからずっと可愛がってもらっていたので僕は、しっかりとお別れを言わなければと思う・・・。
入院はしていたものの、
大叔母は重い病気ではなく、最期まで心も記憶も確かな人であった。
訃報は突然で驚いたのだけれど、
静かに、穏やかに逝ったのだと聞くと、
やはり大叔母らしいなと感じる・・・。
小柄で丸顔で、いつもニコニコと笑っていた。
そうだよ、僕は、大叔母の笑顔しか知らない・・・。
棺のガラス越しの大叔母の今夜の表情もまた笑顔であった・・・。
僕は、大叔母が作ってくれるかき餅が大好きだった。
お餅を細かく刻み、干し、
油でカラリと揚げ、塩をまぶしただけのかき餅だが、
僕は、それが大好きだった・・・。
高校時代、
苦しい状況にあった僕のために、
大叔母が神殿に額づき、僕のために祈ってくれていたと聞いた時は、
かき餅を食べながら泣いた・・・。
ありがとうとさようなら。
ありがとうとさようなら。
深呼吸をした斎場の夕刻の冷たい風が胸に刺さった・・・。
ありがとうとさようなら。
この先もその言葉を、ね、
幾人もの大好きな人に贈りながら僕は生きる。
ありがとうとさようならを逆に、
僕が大好きな人たちに言って今生を閉じるまで・・・。