ひっそりとして静かだけれど、とても確かなる大会で。

春の高校野球・・・。
なあ、おい、東京都の大会だってさ、静かにひっそりとなのだけれど、な、
とても確かに行われているんだ・・・。


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震災の影響により、予選は行われなかった。
誰もが厳しい冬のトレーニングを終えて、せっかく迎えた春だったのだから、
予選から出場する予定だった高校の球児たちは、さぞかし落胆した事だろう・・・。


だからこそ、な、いいかい?
本大会に出場出来る全ての高校の全ての球児たちは、
しっかりとしっかりと大切な気持ちを胸に収めて闘ってほしい・・・。


闘うってのは、な、
相手チームとじゃない・・・。
それぞれが自分自身と向き合うって事だ・・・。
それが高校野球に於ける本当の闘いなんだぜベイベ・・・。


野球が出来る喜び・・・。
大切な仲間と共に野球が出来る喜び・・・。
唇から血が滲むほど噛み締めることだ・・・。
噛み締めて味わうべきだ・・・。
野球が出来る喜びを、な・・・。


感謝しろ感謝しろ感謝しろ感謝しろ!


あのセンバツ大会で優勝した高校の主将が語った言葉を、な、
日本中の高校球児全員の想いにしておくれよ・・・。


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現在、高校野球のスタンドから、
ブラスバンドの音は聞こえない・・・。
ちょっぴり寂しいのだけれど、
それもまた良しだと僕は思う・・・。


今までずっと、ブラスバンドの音に掻き消されていて聞こえなかった何かがある。


それが確かに聞こえるんだ・・・。


血だな。
そう、血液だ。
脈々と流れる血液の音だ。
野球の血液の音だ。


ボールの音がはっきりと聞こえる。
野球の鼓動が聞こえる。


高校野球が持つ本来の音を感じられるんだよ・・・。


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野球の鼓動に合わせて僕は深呼吸をする。


ひっそりと静かな大会なのだけれど、
とても貴重な、確かな大会だと言えよう・・・。


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がんばれがんばれ!
全ての高校球児たちよ・・・。


ブラスバンドの音が聞こえない球場で、ね、
君が小さな子供だった頃に聞いた野球の風の音を聞いてくれ。


野球の風の音を思い出してくれ・・・。


今、こんな時代に、ね、
いや、こんな時代だからこそ君たちは、
それを思い出してくれ・・・。


いつの日か、
再びブラスバンドの音がスタンドから聞こえてくるまでに。