たからばこ。

たからばこが着くと嬉しかった。
高校生だったからね、素直に表現出来なかったけれど、
たからばこが着くと本当に嬉しかった。


とっぷりと暮れた闇の中を、
寮へと帰る道のりの辛かったこと辛かったこと・・・。


大人になった今でも僕は、
時折その頃の夢を見て、
汗ぐっしょりになりうなされたりする・・・。


思い出すよ、
思い出したよ、
たからばこ・・・。


オフクロがいれてくれた甘いコーヒーを飲み、
スルメと豚足を久しぶりに食べさせてもらって思い出したよ、


たからばこ。


寮にいる僕に、
オフクロが送ってくれたたからばこ。


そう、
クロネコ佐川のペリカン便さ。


段ボール箱
その中に入っていた品物の数々。


インスタントラーメン、
スルメ、
真空パックの豚足、
好物だったお菓子・・・。


「元気ですか?」で始まる手紙と、
弟と妹の写真・・・。


たからばこ。
そんなたからばこ。


嬉しかったんだ。
本当に・・・。


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夜、
家路を急ぐ球児を見かけた。


温かな家に毎日帰る君はシアワセ。


でも、ね、
たからばこの有り難さは知らんだろ?


わっはっは、
僕の勝ち・・・。


今もオフクロの手紙を保存している。


恥ずかしくてさ、内緒なんだけど。