りあるてぃがある。

西暦2033年、
すっかりと老人になった僕は、
大きな病院の白い無機質な病室で、
一人の少年の手を握りしめていた・・・。


とてもそれが悲しいのは、立場が逆であるということ。
まさか孫が逝くのを見送る事になるなんて思ってもみなかった。


孫は、僕に残されたたった一人の肉親であった・・・。
「御臨終です。」と告げる年老いた医師の言葉に僕は泣き崩れた・・・。


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「お宅のお孫さんもですか・・・。」と、
旧知の野球の親父仲間から言われ、僕は静かに頷いた・・・。
日本人の平均寿命は今、
二十歳を下回っている状況だからな、
彼もまた僕と同じ天涯孤独の身である・・・。


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昔、東北や北関東にも人は住んでいた・・・。
そこに、人間の営みがあったんだぜ・・・。
そんな事を言っても若い人たちには信じてもらえないかもしれないけれど。


ひとりぼっちの老人になった僕は、
ブログにそんな事を今日も書いてはいるのだが、
もう、それを読む若い人などいない事を本当は知っている・・・。


どこかに逃げ出したくなる・・・。


でも、もはや世界から隔離された国から、
我々日本人の生き残りが出国する事は許されていない・・・。


川の水は清らかに見えるし、
空は澄んでいるのだけれど、
ついぞ魚は見かけないし、
空で唄う鳥もいない・・・。


僕は、背丈ほどの折れた木を杖にして、
その杖に全身の重みを預けながらゆっくりと彷徨う・・・。


今日も、
明日も・・・。


孫が逝った後、僕にはもう失う物は無い・・・。
ようやく僕は放射能に勝利したのだ・・・。


ハヤトの親父、67歳・・・。


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・・・夢か?
・・・夢なのか?


おおおっ、
おおおおっ、
おおおおおっ、
寝汗グッショリだぞ・・・。
あまりにもリアルな夢であった・・・。


やっぱ原発やめようぜ・・・。
もしも間に合うのなら、ね。


子孫に謝らなくっちゃならないような過去たる現在を生きるのは恥ずかしいことだぜ、
シャギナベイベ。


おい、国会のシャギナベイベたちよ。