迷子になってしまわぬようにと、
僕は、母の手をしっかりと握り締めて懸命に足早に歩いている・・・。
その母は随分と若く、まだ赤ん坊の弟を背負っている・・・。
母はかなり急いでいて、僕はその手を離さぬように握りしめて小走りにさえなる・・・。


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寝苦しい熱帯夜だ・・・。
僕は、また同じ夢を見たんだ・・・。
汗だくになって目覚めた・・・。


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すごくリアルな夢なんだよ・・・。
たぶん僕は3歳ちょっとだったのだろうけれど、
断片的な記憶を今、あまりにもリアルな夢として見てしまうのはなぜだ・・。


不可思議な場所に停まっている列車の映像は確かな記憶だ。
事故だったのか故障だったのかは定かではない・・・。
幼かった僕が喜ぶからといった理由で僕らは先頭車両に乗っていた・・・。
それが良かったのか悪かったのかは知らない・・・。
ただ、ずっと母の手を握り締めて足早に歩いた・・・。
何かが追いかけて来るような気がした・・・。


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ジットリと嫌な寝汗を拭い、
シャツを着替えた・・・。


雨戸を開けた・・・。
網戸の向こうの漆黒の闇・・・。


虫が鳴いてる・・・。