女の子の琴線

元日生まれの息子がまだカミさんのお腹にいた夏の事だから、
娘は2歳にもなっていなかったのだ・・・。

その夏、
僕ら家族3.5人は伊豆へ海水浴に出かけた・・・。
たった1泊ではあったが、とても楽しい旅だった・・・。


海辺から民宿へ戻る道すがら、
貝殻で作ったアクセサリーを売っているお店があって、
まだヨチヨチ歩きだったけれど娘は、そのお店に入りたいとせがんだ・・・。


お店の中に入ると、
娘はうれしそうにキョロキョロと品物を見渡していた・・・。


ムギュっと小さな手で娘が選んだのは、白い貝に赤いシマシマ模様のペンダントだった・・・。


カミさんが持った小さなトレーにペンダントを入れると娘はヨチヨチと店内を歩き、
イヤリングのコーナーの前で立ち止まり、まったく同じ模様のイヤリングを選んだ・・・。


白に赤いシマシマ・・・。


膨大な数の品物がある中から、ね、
ちっちゃかった娘が選んだ品物は白に赤いシマシマ


それが気に入ったのだろうなあ。
ちっちゃくてもお気に入りってあるのだなあ。
と、僕は感心したものだ・・・。
きちんとセットで同じ物を選ぶんだもんな・・・。
まだ2歳にもなっていない頃からさ、
女性には心の中にやはり琴線があるのだなと思った・・・。


そこだよ!そこ!
その琴線に触れる品物を大切に創り続ける事だ。
宝飾職人がそれを忘れてしまっては話にならない・・・。


900円のピアスを買ってくれたという10代の女の子は、ね、
僕の愛娘と同年代なのだろうな・・・。
そのピアスを見つけて、
どんな尊い気持ちでその女の子が買ってくれたのかを考えると、
やはり僕はうれしくなり、ジ〜ンとする。


この気持ちを忘れない事だ。
僕の仕事の原点はそこにある。