カゴちゃん。
朝のウォーキングの時に僕は、
自転車に乗った登校途中の高校生たちと遊歩道ですれ違う。
朝の澄み切った空気の中、
息を弾ませて自転車を漕ぐ彼ら彼女らの姿は眩しい・・・。
高校時代とは、まさしく青春の序章なりけり。
高校生諸君よ、今を煌け!
って僕は、てくてく歩きながらいつも心の中でエールを贈っている。
しかし寒くなったものだな。
あっという間に季節はウインタースだ。
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すれ違う高校生の女の子の中に一人、
大きな買い物カゴ付きの自転車に乗ってる子がいる。
そうそう、主婦のヒトが乗ってる自転車みたいな、さ、
リアフェンダーの上に取り付ける大きな買い物カゴが付いた自転車さ。
僕は、その女の子をカゴちゃんと名付けている。
なにしろアイドルみたいに可愛い顔をした女の子だからな。
カゴちゃん・・・。
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しかし、大きな買い物カゴ付きの自転車に女子高生が乗っているのは何故だ?
たぶん、カゴちゃんは、
今時たいへん珍しい健気な女の子なのではないだろうか。
きっと、カゴちゃんは、
病弱なお母さんを支えている健気な女の子なのではないだろうか。
学校帰りにスーパーに立ち寄り、夕餉の買い物をするのだろうな。
そのためにあの自転車が必要なのに違いあるまい。
ぐすん。
「これはお母さんの大好物・・・。
明日のお父さんのお弁当にこれを入れてあげようかしら・・・。
あっ、今日はお刺身が安いわ・・・。」
なんて考えながら買い物をするんだろうな、カゴちゃん・・・。
ううっ、ぐすんぐすん。
「ただいま。
お母さんの大好物を買ってきたよ。」
「ごめんね、お母さんは早く元気になるから許してね・・・。」
「何言ってるの、お母さん、それは言わない約束でしょ。」
おおっ、おおおおお〜っ、
もうダメだな、僕は号泣する・・・。
なんて良い子なんだ、カゴちゃん・・・。
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偉いよ、偉い・・・。
他の高校生たちにも見習ってほしいよ、カゴちゃん・・・。
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将来、
こんな子が息子のお嫁さんに来てくれたらいいのにな。