スイカ哀歌

「うわあん、スイカが食べたいよっ!」と、スーパーの果実売り場で5歳位の男の子が駄々をこねていた。
「どうしても食べたいよっ!」と、その男の子は母親の腕を掴んでねだっているのだけれど、
「駄目よ。」とつれなく母親は言っていた。


たまたま僕はその時スイカを、ど・れ・に・しようかな〜?って選んでいたところだったので、
なんだかその男の子の前でスイカを自分の買い物カートに入れ辛くって、一度果実売り場を離れたのだ。


しばらくしてスイカの場所に戻ってみると、その男の子はまだネバネバねばっていた。
「食べたい食べたい食べたい食べたいっ、スイカ食べたいっ!」
「駄目っ!絶〜対に駄目っ!お腹こわしちゃうから!」
「嫌だっ、食べたい食べたい食べたいっ、スイカ食べたいっ!」


おおおっ、この現代の飽食日本に於いて、食べ物にここまで執着する男が僕以外にもいた。
それは、驚きを通り越して、感動的ですらある・・・。


少年よ、
イカを食べたがっているあどけない目をした幼い少年よ、
オジサンは、君の目の前にあるスイカを買っちゃうんだもんね。
だってオジサンはオトナだから。
見てみな、君が欲している6分の1カットのスイカよりも1ランク上の4分の1カットだぜ、ホレホレ。
いいだろいいだろ?うらやましいだろ?
その気持ちを大人になっても忘れるんじゃないぞ・・・。
オジサンは、今夜、スイカを美味しく食べる者なりけりだもんね〜だ。


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しかしな〜、
よそんちのサイフの中身に興味は無ぇんだけれど、
イカ6分の1カット、タイムサービスで198円なりよ、
子供がここまで欲しがっていたら、買ってあげなよ母ちゃんよ・・・。


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え?
そんな考えだから僕は甘いってか?


うんうん、スイカと同じで甘いでござる。


イカ、スイカ、スイカ甘いかしょっぱいか。