「はだしのゲン」のススメ

小学校3年生の時だったな。
僕らの教室には学級文庫があった。
自分が読んで感動した本を、友達にも読んでほしいと思った人が家から持って来て並べる、そんなシステムの学級文庫だった。
僕はさ、ホレホレ、お馬鹿な子供だったのだけれどなぜだか本だけは好きでなあ、
学校の図書室はもちろん、そんな学級文庫の存在もありがたかったんだよ・・・。


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その学級文庫にね、漫画の「はだしのゲン」全巻があった。
担任の先生が持って来た本であった。


現在47歳の僕らは、少年ジャンプ連載当時の「はだしのゲン」は知らない。
僕らが初めて「はだしのゲン」に触れたのは、ジャンプコミックスよりも一回り大きなサイズの単行本だ。


漫画ではあるが恐くて恐くて、そして悲しかった。
夜、夢に見てうなされるほど恐ろしかった・・・。
でもね、その恐さや悲しさが戦争なのだと知ったんだよ・・・。
戦争の恐さや悲しさを教えてくれたのは「はだしのゲン」だったのだと思う・・・。


漫画ではあるが物語の中で僕はゲンになり、
僕の弟はゲンの弟になり、
僕の両親はゲンの両親になった・・・。


ゲンが感じた恐さは僕の恐さになり、
ゲンが味わった悲しみは僕の悲しみになった・・・。


小学校3年生、まだ8歳だった僕だが、
この恐くて悲しい物語を最後まで読み切ったんだよ・・・。


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大人になった僕は、戦争が嫌いだ。
戦争が嫌いだからね、日本国憲法が大好きだ。


島根県教育委員会の人たちが、子供に「はだしのゲン」を読ませるな!って言ってるそうだ。


どうして彼らが子供たちに「はだしのゲン」を読ませたくないのかと言うと、
子供たちを、戦争を嫌悪する大人にしたくないからなのだろうな・・・。


でもね、つくづく彼らは愚かだと思うぜ、
わっはっは、
読むな!読んじゃいけません!って言えば言うほど、な、
子供たちは読むに決まってるじゃないか・・・。


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小さな子供にこそ読んでほしいよ、「はだしのゲン」・・・。
読んで、その物語の中を生き抜いてみてほしいよ・・・。


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僕はお馬鹿な大人だが、
愚かな大人にならずに良かった。