「 それにしてもアンタは厳しい道ばかりを選ぶね〜。 」と、
呆れたような口調だが嬉しそうにカミさんが息子に言った。
息子の次の実習先が、小児外科と決まった夜の事である。


将来、どんな科を選んだとしても、厳しい道に変わりはあるまい。
実際に現場の空気に触れて、
自分自身に問い、
もがきながら答えを探す実習であれば良いとカミさんは考えているのだろうと思う。


母親としてではなく、
医療の現場の最前線に立つ先輩としての意見を息子に言う事が多くなった。


カミさんの勤務する病棟のN医師が言う、
「 超ベテランナースの母ちゃんと医学生セガレの日常会話が知りたい。 」についての答えは、
概ね上記の通りである。


・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・


「 あのバカ・・・。 」
一方、母親としては相変わらず一番多く言うセリフはコレ。
「 あのバカ・・・。 」


携帯電話を家に忘れたり、
自転車で駅まで行ったくせにそれを忘れて徒歩で帰ってきたり、
そんな事を繰り返している息子に対して、


「 あのバカ・・・。 」である。


・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・


「 チッキショ〜、
家に着いてオレの自転車が無いのを見て、
あ、オレは今朝、自転車で出掛けたんだって思い出したんだよ。
すご〜く損をした気分だ。 」


そのバカは、こう言っていた。