「 オレ、なんだか最近涙もろくなっちゃってさ、
ああやって元気に歩いている小さい子を見ただけで涙が出そうになるんだ。 」


午後、駅から家へ帰る車の中で、
運転をしながらそんな事を息子が言った。


実習先で、病気と闘っている小さな小さな子供たちの傍にいて、
間違いなく息子の中に何かが芽生えたのだろうと思う。


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〜 泣きたい時には思いきり泣く事が大切だ。 〜
僕は、息子にそう言ってあげた。


赤ん坊だった頃の息子の、
呼吸器を着けてグッタリと横になっているあの姿は、
おそらく僕の記憶から消える事は無いだろう。
48年の今までの人生の中で、一番辛い記憶である。


息子本人は赤ん坊だったから記憶には無いだろうけれど、
病気に対する憤りや怒りは、魂の奥深くに刻み込まれているはずだ。


お医者さんというのは、
世の中のありとあらゆる職業の中で、
一番泣く事が多い仕事なのだろうな。


泣く事のためにこんなにもたくさん勉強しなくちゃならないなんてさ、
割に合わない仕事かもしれないな。


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「 しかし小さい子たちって可愛いな。 」


信号待ちをしながらハンドルに両手を揃えるように乗せて、
歩道を歩く若い母親と小さな小さな子供の姿を見ながら息子は言う。


そうだよな、
子供たちはみんな、世の中の宝物なんだからな・・・。


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息子は今日から、
アンパンマン学校の2年生だ。


たくさんたくさん泣き、
たくさんたくさん憤りや怒りに震え、
たくさんたくさん学んで、


今日よりも明日、
明日よりも明後日、
強さと優しさを身に着けてほしい・・・。