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ふわりふわり、タンポポの綿毛が一つ、
僕の目の前を飛んでいる。
呑気なモンだな〜、
種のくせして毛を生やして飛んでいるんだもんね、
この惑星にはいろいろと呑気なモンがありますな・・・。
狙いを定めてピシッとデコピンをすると、綿毛は何処かへ落ちた。
かわいそうなことをしてしまった・・・。
許しておくれ、綿毛くん、
そこがきみの咲くべき場所、かもよ。
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小学生だった頃、
同級生Uくんの耳の中にタンポポの綿毛が入り、たいへんな事になった。
ああ、そんな事を思い出した。
みんなでタンポポの綿毛を吹きあいっこしていたところ、
不運にも一つがUくんの耳の中に入っちゃったのであった。
「 なんかムズムズする。 」とUくんは言っており、
一緒にいたMくんが落ちていたマッチ棒で取ろうと試みたのだが取り出せなくって、
すぐに僕らは取り出す事をあきらめた。
耳毛と綿毛が絡まっちゃったんじゃないかと今にして思うのだが、
まだ幼かった僕らは、
いつかウンチと一緒に出てくるから大丈夫だろうといった結論に至った。
その後も僕らは夕焼けチャイムが鳴るまで普通に遊び、
それぞれ家路についた。
その夜、
お風呂上りにUくんは真っ直ぐに歩けなくなり、
慌てたお母さんに連れられて耳鼻科へ行き、翌日学校を休んだ。
耳の中でタンポポの綿毛は想定以上に膨らんでいたのであった。
そう考えると、恐るべし、タンポポの綿毛。
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小学生低学年男子のみなさんよ、
タンポポの綿毛の吹きあいっこは気を付けなさいよ。
春の穏やかな日に想う。
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午後、
姪っ子夫婦が遊びに来た。
姪っ子アミちゃんと、夫であるナオくんの髪に、
それぞれタンポポの綿毛が付いていた。
耳の中に入らなくって良かった。