真夜中に着信あり。
セガレの電話番号だがな、
受話器の向こうから聞こえてくる声はタラちゃんだ。
フグ田タラオくんだ。


タラちゃんが言うには、
酔ってお財布が失くなっちゃって困り、交番にお世話になっているとの事。
しかも歌舞伎町だぞ、歌舞伎町の交番。
慌てて僕は車で深夜の歌舞伎町へ向かった。


新宿に着く少し前にセガレに電話をしてみたのだが、
タラちゃんは既にイクラちゃんになっていて、嫌な予感がした。
交番にその姿は無かった。
トイレに行くと言って交番を出たきり、戻って来ないのだそうだ。


責任を感じてだろうな、ひたすら僕に謝る若いおまわりさんに、
僕もまた謝り続けたよ、ご迷惑お掛けして申し訳ありませんって。


若いおまわりさんと僕の二人でイクラちゃんを探した。
まったくな〜、歌舞伎町はカブキ者(傾奇者)でいっぱいだ。
あちらこちらで酔って寝ている人がいて、
その都度僕らはイクラちゃんじゃないかと顔を確認したが違った。


ここには書けないいろいろがあり、無事に見っけ。
20代の若い制服おまわりさんと私服の両津の僕のコンビで解決。
おまわりさんには本当に感謝の想いでいっぱいだ。


・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・


午前4時半、東久留米に帰着。
母ちゃんは起きて待っていた。
イクラちゃんよ、母ちゃんに心配は掛けるな。


どれだけヒドイ状態になったとしてもだな、
若い頃の父ちゃんよりはマシだ。
だから謝らなくて良い。


若い頃の僕なんかの場合は、
知らないうちに身体中がボコボコになっていて、
花園神社で目覚めた事がある。


いつか全てが笑い話になる。
かもよ。


もう父ちゃんは疲れたので寝ます。