世界の国からこんにちは

肘の病院へ向かう道すがら、息子とたくさん会話する。路地を一本ずらしたり、遠回りしたり。楽しい発見があったりする。住宅地の中に焼き鳥屋さんがある。帰り道にカシラを一本ずつ食べる。肘は順調に回復している。とてもうれしい。

「ねぇお父さん、月の石って見た事ある?」唐突な質問だが、愛知万博に向けての話題が多い今日この頃だ。どこかで聞いたのだろう。
「見に行ったよ。でもなー、あんまり憶えてないんだよ。」

1970年、大阪。
一枚の写真が残っている。祖父と祖母と一緒に僕が写っている。祖父も祖母もまだ50代だ。とても若い。半ズボンを履いている腹話術の人形みたいなのが4歳の僕だ。うっすらと憶えているのが太陽の塔。一番上の顔の部分、口笛を吹いているみたいで面白かった。あとはアメリカ館へ続く長蛇の列。並んだことははっきりと憶えているが月の石を見た記憶は無い。おそらく力尽きて眠ってしまったんだろうなぁ。
そんな話を息子に聞かせた。
祖父は逝き、祖母も今は病院。
「大きいおばあちゃんのお見舞い、行こうな。」

35年前、みんなが若く元気だった時代。僕たちの国がまだ若かったから?
ちがう。僕たちの国はまだ若く元気だよ。僕たちも元気だ!元気のバトンを子供たちに渡す日まで。がんばって元気に走ろう。愛知万博も成功しますように。

しかし月の石、見たかったなー。
月には大杉勝男さんが打ち込んだホームランボールもたくさん転がっているだろう。

「ヤキトリ、一本だけにしておこうね。晩御飯食べられなくなっちゃったらお母さんにおこられちゃうからさ。」