おせんべいの作り方

「お父さん・・・お父さん・・・起きて・・・」
ワシの身体を揺すっているヤツがいる・・・・。
ワシの安らかな睡眠をさえぎるのは誰だ?
「お父さん・・・・」


うーん。午前6時。息子が泣きそうな顔で布団の横にいた。
「どうした?」
「ううっ、ごめんなさい・・宿題やるの忘れちゃった・・・うううっ。」
「何だとっ!」布団が吹っ飛んだ。うーん、朝は調子が出ない。


昨日を振り返ってみる。宿題をする時間はあった。たぶん。
1、野球から帰ってきて道具の手入れ、特に今日、月曜日の体育の授業はソフトボール。自前のグローブをドラゴンズの子供たちは持っていく。連中にとってクラスのヒーローになれるかもしれない日だ。それはそれは入念に磨いていた。
2、ワシと一緒にお風呂に入った。肘の曲げ伸ばしをした。角度が残り5度曲がればいよいよトレーニング開始とあって、いつもより長い入浴だった。
3、晩ご飯を食べてからテレビ。サザエさん、ワンピース、ビフォー&アフターを見た。
4、歯を磨いて、ワシと一緒に二階へ行って寝た。2人ともすぐに熟睡。
そして今、この状況にワシら親子は、ある。


「何だ、宿題は?算数か?国語か?」
「違う。おせんべいの作り方・・・調べるの・・・」


とりあえず居間へ降りる。朝の家事をしていたカミさん激怒。
カミさんがパソコンをたちあげる。必死に検索エンジンで「おせんべい 製法」を調べる。ダメだ。お店のHPばかりだ。
昔ながらの製法でこころを込めてつくっています。ってか?最新鋭の設備で、安心のおせんべい。ってか?
今、ワシら家族は昔ながらだろうが現代的だろうが、ただ製法が知りたいんだ。
苦肉の策。家にあったおせんべいの袋の裏に書いてある原材料名を書かせる。
うるち米、植物油脂、焼き塩、粉末しょうゆ、たんぱく加水分解物。


これでよしっ!   ワシ的にはOK!なっ!   OK牧場。うん。


「たぶんダメだと思う・・・・。ううっ。」
おい!男がこんな事でうろたえるな!と、一喝!
「いいか?お父さんがこれから言うことを書け!1、お餅を作る。2、乾かす。3、焼く。4、味をつける。以上。」
すごいなーワシ。パパは何でも知っているってか?
なんとかカタチになった。


なんという朝。どっと疲れた。7時半、電話が鳴る。ドラゴンズのクラスメート、U太。
「今日さ、グローブ持って行く?」
「おうっ!持って行くぜぃ!」途端に元気な声。


ワシの朝をかえせ!
おせんべ小僧!