桜がきれいだ。
満開になるまでにはまだ少し、時間がかかりそうだけれど。
毎年僕はソメイヨシノが咲くと、ありがとうと声をかける。


染井霊園に、母方の先祖代々が眠る。
国道17号線からほど近い場所なのに不思議なくらい静かな墓地だ。
柔らかな空気に溢れ、時間が止まっているような錯覚に落ちる。
子供の頃から僕の中では、染井イコール、安らかな場所、空気、そして時間。


桜にもたくさんの種類があって、それぞれに素晴らしい美しさがあるのだけれども、ソメイヨシノだけは何か違う。
人間を慈しみながら咲いてくれている。
人間のために咲いてくれている。・・・・・。僕はそう思う。だから切なく、儚く、美しい。


・・・・・今年も咲いてくれてどうもありがとう。しばらく楽しませてもらうね。・・・・・


昨日は、小学校の入学式。
ちいさな1年生たちが希望に胸をふくらませて、小学校の門をくぐった。
最高学年になった6年生は、はりきって入学式を準備から手伝った。
おーい!立派なお手本になるんだぞ。
ソメイヨシノは慈しみのまなざしで、子供たちを見守ってくれていたにちがいない。


・・・・・今年も咲いてくれてどうもありがとう。・・・・・・・・・・・・・・・・・


朝刊の片隅に、また虐待の記事がある。
3歳の女の子が亡くなった。
最後の言葉が「ごめんなさい」だった。


僕は無力だけれど、腹の底から怒りに奮えていよう。


彼女のわずか3年の人生をも・・・・ソメイヨシノは慈しみながら・・・きっと。


・・・・・今年も咲いてくれてどうもありがとう・・・・・・・・・・・・・