御器かぶり

あっちっち!真夏日なり。いよいよ気温が30度を超えた。
とりあえずは梅雨の合間の夏日なのだけれど、今のうちに少しずつ身体を暑さに慣らそう。
そうだよ。輝く夏を元気で迎えるために、ね。


夕方、ハヤトのトレーニング中の出来事。


ボールがころころ・・・。
僅かな隙間をぬって植木鉢の棚の向こう側へ・・・。
拾おうとしたのだけれど手が届かない・・・。
僕はプランターを持ち上げた。どっこいしょ!


その時、なにやら黒い物体が飛び出した。
ガサゴソ・ガサゴソ・・・。
大きくて真っ黒のゴキブリだった。
ガサゴソ・ガサゴソ触覚ゆらゆら・・・。
僕も驚いたけれど、ゴキブリだってビックリしただろう。
ヤツは家の前のアスファルトの上で動きを止めた。
じっとして動かない。あれれ?死んじゃったのかな?


ハヤトと僕は向かい合ってしゃがみ、ゴキブリを観察した。
久しぶりに見たぞ。こんなに大きいヤツ。
〜大きいゴキブリひさしブリ〜
〜虫だ無視しろ、むっしっし〜
即興の歌を僕は唄った。


う〜む。ツヤツヤしているぞ。
いわゆるカラスの濡れ羽色なり。
湯上りの美人の髪の色だ。
おっ、角度を変えて見てみるとね、単純に黒じゃなくて茶色っぽかったりもする。発見!
人類が滅びた後も生き延びるであろう生物。ちょびっと尊敬。
でもね、やっぱり不気味なカタチ。
どっかに行っちゃってほしい・・・。
僕は小枝でつついてみた・・・。
つんつん・・・。


サササササーッ。と30センチほど動いて停止。


コイツをなんとかしなくっちゃ!


ハヤトっ!踏んじゃえ!
「ええっ!嫌だよっ!」
いいから踏むんだ!
「嫌だよっ!踏めないよう!」
踏めないのか!さてはお前、キリシタンだな?



「殺生はダメだって、いつも父さんが言ってるじゃないか!」
う〜む。そうだった。うっかり忘れていた。踏んじゃダメだっ!


! 触覚を持ってつまんで、ハヤトのTシャツの背中に入れちゃおうかな?
  怒るかな?怒るだろうなぁ・・・。やめとこ。
  なにしろ思春期だ。


洗車用の洗剤をゴキブリに掛けた。キレイキレイ。
あれ?ひっくり返って寝ちゃったぞ!
そーっとそーっと、起こさないように気をつけて、
チリトリに乗っけて草むらへ・・・。
ナイナイ。


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さて、トレーニング再開。・・・・・・・・・・・・・・・・・・


むっしっし。