僕は、踏切の前で車を停めていた・・・。

電車が走る。
電車が走り去り、遮断機が上がるのを待っていた・・・。


その時、僕の前を、自転車に乗った「彼」が横切った・・・。


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野球をやめてしまったのか?


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中学1年生の「彼」は、野球を続けているようには見えなかった・・・。


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「彼」は、エースだった。
小学生時代の、強いチームのエースだった。

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小平ポニーズOr清瀬ポニー・・・。
一緒に体験練習に行ってみようよ。って、
「彼」のお父さんにね、僕は声を掛け続けていたのだけれど・・・。


ポニーへ行こう!
ものすごくいいみたいだよ。
あの野球を息子たちに習わせてあげようよ・・・。って・・・。


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けれど「彼」は、市内で活動する軟式のチームに進んだ・・・。


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「彼」が、その軟式チームを辞めたと聞いたのは、昨年の早い時期・・・。

「彼」が、自信やプライドを失っていなければいいのだけれど・・・。
ずっとずっと僕は、祈るような気持ちで、「彼」の事を想い続けていた・・・。



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野球の好きな子供たちの笑顔が見たい・・・。
それだけが僕の願いなんだ・・・。


野球は素晴らしいスポーツなんだ。
野球の好きな子供がね、野球で傷付く姿は見たくないんだ・・・。


僕もクマさんもね、たくさんたくさん見た・・・。
野球で悲しい想いをする子供たちの姿を見た・・・。


もう見たくないんだ・・・。


野球は素晴らしいスポーツなんだ・・・。
子供は傷付いちゃいけないんだ・・・。


PONY
日本でポニーリーグの火を灯してくれた人たちを想う・・・。


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野球は楽しいんだ。


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「彼」は、車の中の僕には気付かず、背中を丸めて自転車を漕ぎながら、僕の前を横切った・・・。


僕は再び胸をえぐられるような痛みを感じた・・・。


野球を続けていておくれ・・・。


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「彼」はね、エースだったんだぜ。


「彼」は、あの強いチームのエースだったんだぜ。


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もっともっと多くの人に、PONYを知ってほしい。


ポニーリーグを知ってほしい・・・。


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