芯
久しぶりに手紙を書いた。
便箋を前にしてペンを握ったのだけれど、漢字が出て来ず四苦八苦だった。
いかんなー。これではいかんなー。
すっかりパソコンや携帯メールの恩恵の影で、文字を書く事が苦手になってしまっている自分がいた。
便利さと反比例して失う物の多さに気付く。
でもなぁ、携帯メール全盛のご時世、それで充分に事足りている。
仕方ないのかもしれない・・・。
だが、今回はどうしても肉筆の手紙で送りたかった。
若い友人にエールを送りたかったんだ・・・。
失われた10年。
そう呼ばれている時代がある。
その10年の間にね、社会へ出て行かざるを得なかった若者たち・・・。
彼らの現状は、ニュース等で知られているよりも深刻だ。
胸が痛む。きりきりと胸が痛む・・・。
ほんの僅かではあったのだけれど、バブルの尻尾を知る世代の人間の1人として、
件の若者たちに対して申し訳ないと思う。
若い友人が送ってくれた「モンゴル800」のカセットテープに、どれだけ勇気をもらっただろう。
僕も、そしてハヤトも・・・。
今度は僕が、彼にエールを送る番だ。
あきらめるな!あきらめるな!あきらめるな!
ニート、或いはワーキングプア・・・。
切ない響きの言葉たちに胸が痛む・・・。
報われない努力を重ねなければならない若者たちがいるのならば、きっと僕たちの社会は不幸だ。
あきらめるな!あきらめるな!あきらめるな!
僕は傍観者にはならない・・・。
久しぶりの手紙を、ポストに投函した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
大丈夫だよ。
大丈夫・・・。ノープロブレム!
報われない努力なんて無い。
決して自分を卑下してはダメだぞ!
報われない努力なんて無い。
いいかい?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そうだよ。
子供たちの野球を見てごらん・・・。
君の町の小学校の校庭にも、河川敷のグラウンドにも、たくさんたくさんいるはずだ。
真っ黒になってボールを追いかけている子供たちがいるはずだ。
彼らの様子を見に行ってごらん・・・。
心が本当に元気になるぜ。
報われない努力なんて無い。
野球少年たちが教えてくれるぜ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ポストの赤。
夕日が映って少しだけオレンジ色。
明日には夢叶う、夢叶う、いい風が吹く・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
人間はな、誰だってシアワセになるために生まれてきたんだ。
胸を張ろうな。
胸を張って生きような・・・。
がんばれがんばれ・・・。