NEW学式
新しいクラスの仲間たちと一緒に、体育館へ入場する娘の姿を見ながら僕は、自分自身の高校入学時の頃を思い出していた。
それは、入学式を目前に控えた僕らに向けた、ある男の子からの手紙についての話だ。
僕らの高校に関係する新聞の紙上に、投稿掲載されたものなのだけれど・・・。
今日の、笑顔いっぱいの娘たちの様子を微笑ましく見つめながらも、その手紙の事をね、考えずにいられなかったんだ・・・。
その男の子の手紙のタイトルは、「残念無念」と書かれていた・・・。
「小さい頃から、ずっと憧れていた高校でした・・・。
今年、受験をしたのですが、結果は不合格でした・・・。
入学されるみなさん、僕の分まで高校生活をがんばって下さい。」
それが、男の子の手紙の内容・・・。
しっかりとね、その想いを受け止めなければいけないよなぁって、思っていたのだけれど、
僕はね、何度も途中で挫折しそうになった。
それが今でも結構恥ずかしい・・・。
恥ずかしい僕には、こんな事を言う資格なんて無いのかもしれないけれど・・・。
あの手紙を書く事が出来た男の子はね、おそらく僕なんかよりもさ、人間として秀れていたのではないだろうか?
あの当時の僕よりも、ずっとずっと強靭な心を持っていたのだと思う。
多勢の父兄たちの拍手が鳴り響く中、軽やかに歩く娘たちの姿に、あらためて僕は、あの男の子の手紙の内容を噛み締めずにはいられなかった・・・。
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娘よ、そして新しい仲間たちよ。
がんばりなさい。
きっとね、本当はさ、今日ここに、みんなと一緒に並びたかった人たちだっていたんだよ・・・。
君たちは勝ったからここにいるのではありません。
彼らは負けたからここにいないのではありません。
それだけは知っておいた方がいい。
がんばりなさい。ただ、がんばりなさい・・・。
学ぶと云う事と受験とは、全く異質のものです。
それを同義に捉えてしまう事は、とても大きな誤りです。
受験のために勉強をするのではありません。
「智恵」を得るために勉強するのです・・・。
君たちがここにいるのはね、縁(えにし)以外の何物でもない。
どうかがんばりなさい。
多くの友を作りなさい。
青春を謳歌しなさい。
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校長先生の挨拶が素晴らしかった。
僕の好きな詩人、坂村真民さんの言葉を、正しい解釈で新入生たちに伝えていた・・・。
その心の在り様に、僕はとても感銘を受けた・・・。
「念ずれば花ひらく」
そう、この言葉の持つ本当の意味は、誰かのシアワセを祈りなさい。って事なんだよ。
全ての人々がね、お互いのシアワセを祈り、願いながら暮らしなさい。って教えてくれているんだ。
「巨万の富を得たい!」とか、
「仕事で成功したい!」ってね、ずっとずっと願い続ければ叶うんだって勘違いしている人が多いんだけれど。
坂村真民さんはね、タンポポの強さや美しさを、自分の魂にした詩人だ。
そんな事を言う訳がない。
念ずるとは祈る事。
誰かの痛みを知り、誰かのシアワセを願う事。
みんなが祈った時、必ず花は咲く。
「明確な目標をしっかりと持ち、こつこつと研鑽を重ねなさい。」
校長先生は好調先生なり。
否、絶好調先生だと言っても過言ではない。
なかなかの人格者だと見た。
社会に貢献出来得る人材を育む。
少年野球の目的も、学校教育に於ける目的も同じなんだ。
娘を含む新入生全員の高校時代が輝きに満ちて、実り多き日々になる事を願う。
「念ずれば花ひらく」のだから・・・。
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ところで、バイ・ザ・ウエー・・・。
配られし資料の中に、卒業生から在校生へ贈るメッセージ集があった。
「僕たちが果たす事が出来なかった甲子園出場の夢を、君たちに託します。」
ううっ、野球好きな親父の胸をうつ言葉なり・・・。
娘よ!野球部のマネージャーさんになりたまえ!
え?何?
やっぱり野球部は存在しないってか?
嘘を言っちゃいかん!
USO!(UFOのメロディーで。)
見ろ!ミロは麦芽で出来ている!じゃなかったっ!
見てみろっ!ここに書いてあるぞ!甲子園ってな!
何っ!「ダンス甲子園」か?
「川柳甲子園」か?
「みんなのかえうた甲子園」なのか?
う〜む。
やっぱりちょびっと寂しい・・・。