ヨーソロー!自分の海へ!

hayatonooyaji2007-07-11

「人生の羅針盤をしっかりと持て!
 自分自身の手で舵をとれ!」


何だかな、中島みゆきさんの「宙船」の歌詞みたいだけれど違うんだ・・・。
その歌よりも前、これは僕が師から贈られた言葉なんだ・・・。
高校を卒業したばかりの僕の人生が変わった日々のこと。


とても古い型なのだけれど、僕の人生の羅針盤はね、今でも光っているって胸を張って言える。
とても大切な師から譲り受けた羅針盤だ。


その師が眠るのは、その療養所の慰霊塔だ・・・。


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先日、息子たちクル中の第2学年の生徒たち全員は、授業の一環として、隣町にある国立療養所を訪ねた。


その病気の方々が受けてきたのはね、云われなき差別と偏見・・・。


名前も変えられ、死んで骨になっても故郷にさえ帰れなかった現実・・・。


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息子や、仲間たちにしっかりと学んでほしいと思う。


いいかい?
人間はな、誰もがシアワセになるために生まれてきたんだ。
シアワセを感じて、シアワセを味わうために生まれてきたんだ。
いいかい?これだけは憶えておいてくれ・・・。
地球上に生きる全ての人間が同じなんだ。
誰もがシアワセになるために生きているんだよ。
言い換えればね、それこそが生きる事の意味なんだ・・・。


でも、それすら許されなかった人たちがいた事・・・。
しっかりと現在の君たちの柔らかな心で学んでほしい・・・。
療養所の中にある資料館だけなのかもしれないけれど・・・。
君の目でしっかりと見てきてほしい。
君の耳でしっかりと聞いてきてほしい。


なぜこんな悲しい出来事があったのか?ってさ、中学2年生の心で考えてくれ。
考えて考えて考え続けてくれ。


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高校を卒業したばかりの僕はね、陶芸という言葉すら知らなかった・・・。
けれど、ある小さな器の力強さに魅了された。
素朴な黒い小さな器に、僕は震えるほど感動した。


生き抜こう!と叫んでいるかのような器だった。


僕は、どうしてもその小さな器が欲しくてたまらなくなった・・・。


正式な名称ではないのかもしれないのだけれど、その器はね、「全生焼」と呼ばれていた・・・。


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中学2年生の君たちが療養所の資料館で見たのは事実だ・・・。
本当にあった悲しい事なんだよ・・・。


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「全生焼」を追いながら、僕もね、クル中2年生のみんなと同じ事を学んだんだ。


僕はね、僕を魅了した器を作ったMさんの弟子になった。


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生きている証。
生きていた足跡。
己の存在を時代の中に刻み込もうとする意志。
不自由な指で織り成すように形作られる土。


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たかが人間なんだ。
ちっぽけな存在なんだ。


けれど人間なんだ。
僕らは人間なんだ。


刻めるんだよ。自分が生きていた証を、ね。



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シニアリーグのSくんとハヤト。
じっと資料室の展示を見つめる写真が学級通信に載っていた。


Sくん、ハヤト・・・。
この療養所の中でもね、野球をしていた子供たちがいたんだぜ・・・。


いつか、それを君たちに話してあげようと思う・・・。


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この療養所にもね、たくさんの子供の患者がいた・・・。
現在の君たちよりも小さな子供たちがいたんだぜ・・・。
お父さんやお母さんと別れてね、ここで暮らしていた子供たちがいたんだぜ・・・。


療養所の中に学校があった事を教えてもらったかい?


僕の師、Mさんはね、そんな子供たちの父親役だったんだ・・・。


「俺はな、自分の子は無いけれどな、たくさんの子供に恵まれたシアワセな人生を過ごせた。」


Mさんが大きな手で抱っこして慈しみ守り抜いた子供たちはね、みんな元気に巣立ったんだってさ。


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「オリオンの哀しみ」
この本に書かれているのはね、子供たちを守り抜いたMさんの物語なんだ・・・。


自費出版の本の帯を灰谷健次郎さんが書いている・・・。
これは異例な事なのだそうだ・・・。


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「オマエはな、一番心配な俺の末っ子・・・。」


僕は、ずっとMさんに言われ続けていた・・・。


今となっては、それが誇り・・・。


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「オリオンの哀しみ」
病の差別と偏見の中でね、人生を生き抜いた人々の記録。
でも、悲しいだけじゃなかったんだよ・・・。


人間なんだもの・・・。


ちょっぴりの笑顔もあったりするんだ・・・。


資料館には残っていない人々の日々の記録。


もし、読んでみたい方がいたらメールを下さい。


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うわっ!長い記述になってしまった・・・。


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「人生の羅針盤をしっかりと持て!
 自分自身の手で舵をとれ!」


ヨーソロー!


僕は自分の人生の海を航海している。


後悔ばかりの人生だとも言われている?