白い洋服に付いちゃったカレーは、きちんとカミさんに謝るべきだ。
楽しい懇親会を終えて帰宅すると、家族は寝静まっていた・・・。
そ〜っと家に入る・・・。
♪抜き足・差し足・忍び足・・・
今宵のオイラは千鳥足・・・♪
な〜んてね、ついつい唄っちゃうね・・・。
シーッ!静かにしなければならない・・・。
現在の僕の状況を、専門用語で「静か午前」と言う(か、どうかは不明)。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
こんな時、家族それぞれの寝顔を見る事が僕は好きだ・・・。
ほろ酔いの頭でもね、とってもシアワセな気持ちになるんだ・・・。
起こさぬように一人ずつチェ〜ック!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
娘の部屋へ行く・・・。
抜き足・差し足・忍び足・・・。
なんて可愛い寝顔なのだろう・・・って思う・・・。
頬っぺにチューをしたいけれど我慢・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
着替えのシャツとパンツを取りに夫婦の寝室に進出・・・。なんちゃって・・・。
カミさんを起こさぬように細心の注意を払う・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ハヤトの部屋へ行く・・・。
いつものように布団を掛け直す・・・。
勉強机の上に、新チームのユニフォームがあった・・・。
この秋の新人戦に向けて、新しいチームのユニフォームと背番号が渡されたんだね・・・。
このユニフォームは・・・、
ハヤトが憧れて大尊敬している28期・K先輩、
29期・S先輩と一緒に大舞台を駆け抜けた物だ・・。
僕は、酔った頭で考えたからなのかもしれないけれど・・・、
KくんやSくんの事を思い出して泣いた・・・。
野球の魔力に憑かれたような素晴らしい野球少年たちだった・・・。
ジャイアンツカップの大舞台で主軸の重責を担い、本当に誠実に打線を繋いだK先輩・・・。
2年生の時の肘の手術を乗り越え、本当に曇り無き瞳で最終学年を輝いたS先輩・・・。
応援団に過ぎない僕ら親父たちの胸をも、熱くさせてくれた少年たちだったんだ・・・。
ハヤトよ、スピピピ〜・スピピピ〜ってな、大イビキで寝ているハヤトよ、
あの先輩たちからのバトンはな、あまりにも重たいんだぞ・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あのね、ポニーリーグの各クラブではね、
一つのクラブに複数のチームが存在する・・・。
これがポニーリーグの特色のひとつ・・・。
真っ白な練習着のままで中学硬式野球を終える少年はいないんだよ・・・。
すべての少年が数多くの試合を経験する事が出来るようにとの配慮からだ・・・。
だからこそ難しい事も多いのかな?って思う・・・。
それはね、あまりにも贅沢な悩みなのだけれど・・・。
ロングコックスを1軍、フェニックスを2軍と言う人がいるけれど違う・・・。
それは間違いなんだ・・・。
中学生が真剣に硬式野球を学ぶ意義を考えてみれば解るはずだ・・・。
そう、将来輝くための根っこを肥やす時期なんだ・・・。
中学野球小僧にね、スーパースターは存在しない・・・。
存在する必要なんて無いんだもんね・・・。
だってさ、まだまだ誰もが蕾なんだもの・・・。
無限の可能性に満ち溢れているんだもの・・・。
学年混成でのチーム編成だ・・・。
一喜一憂なんてな、意味の無い事だ・・・。
全員が最善の場所にいる・・・。
そうだよ、きっと未来に野球で輝くための、ね・・・。
今、何を学び何を身につけるべきなのか?考えてみよう・・・。
ア・オ・イ・ク・マだ・・・。
あせらず・おこらず・いばらず・くさらず・まけず・・・だよ・・・。
野球の神様を信じていてほしい・・・。
大丈夫だよ。ノープロブレム!
野球が大好きな少年の全てを、僕ら親父たちは肯定する・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ソファーで横たわる・・・。
それが気持ちいい・・・。
明日も晴れますように・・・。
全ての野球少年が輝きますように・・・。
「オ父サン!キャッチボールシヨウ!」
おっ、久しぶりに現れたな〜、我が家の座敷わらし、じゃなかった、
ダブダブのユニフォームを着た小学校1年生のハヤト・・・。
そうだな、久しぶりにキャッチボールしよう・・・。
父さんのグローブを持って来てちょーだい・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・父さん、・・・父さん・・・、風邪をひいちゃうよ・・・。」
中学生の現在のハヤトが、ソファーで寝てしまっていた僕に毛布を掛けてくれた・・・。
あ?夢だったのか・・・。
今な、ちっこい頃の君と遊んでいる夢を見ていたんだ・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「父さん、オレに野球を習わせてくれてありがとう・・・。」
初めて言われた・・・。
そんな事を初めて実際に言ってくれた・・・。
おっ、おお・・・。
照れるじゃねぇか・・・。
そんな事を言うな、馬鹿たれ・・・。
がんばれよ、先輩たちのバトンは重いぞ・・・。
そうだよ、30期、31期のみんな・・・。
無我夢中で野球と向き合えばいい・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
もうちょっと寝かせて・・・。
んがご〜。
んがご〜。