氷の下の魚

僕らの地域では珍しい物だ・・・。
大きなスーパーでコマイを見つけた・・・。
買って帰り、家族で食べた・・・。
金槌でトントンと叩き、身を柔らかくして、ムシムシとむしる・・・。
むっしっし・・・。
ただ、換気をよくして食べなければ大変なんだ・・・。
家中が、思春期男子の部屋みたいな匂いになっちゃう・・・。


北海道の珍味・・・コマイ。
氷の下の魚と書いてカンカイとも呼ぶらしい。
僕にとって、それは懐かしい高校時代の味・・・。


寮で生活をしていた僕らはね、出身地は全国あちらこちらだった。
コマイを食べさせてくれたのはOくん。
北海道出身、野球部に所属する野球小僧だった。
高校時代ってね、きっと今の高校生たちだって同じだろう・・・。
いつもお腹がペコペコだった・・・。
実家から送られてくる荷物はね、大半が食糧だったんだ・・・。


もちろん、ラーメンやらカレーやら、インスタント食品がメインだったのだけれど。


その中にね、それぞれの地方特有の食べ物があり、それを友達に食べさせてあげたり
食べさせてもらったりする事が楽しみの一つだった・・・。


今でもこうやって時々食べるコマイ。
丸顔で頬っぺたが赤かったOくんを思い出す・・・。
野球が大好きで、野球がやりたくて、北海道から関西の高校へ来たんだ。
紫色のユニフォームに憧れて、ね・・・。


「これがコマイ。俺の大好物なんだよ。
 母ちゃんがたくさん送ってくれた。
 食ってみろっ!美味いっしょ?」


当時、母校では野球部の不祥事があり、白球寮は休止状態だった。
だから野球部のみんなもね、僕らと同じ一般の寮で暮らしていた。
そんなすごい野球小僧たちと寝食を共にする事が出来ていた事は、
今考えると、僕にとってもいい経験だったと思う・・・。


甲子園常連校に於ける、野球少年たちの生活。
しかも暖かい家庭を遠く離れての日々・・・。
たくさんの汗も涙も流していた彼らだったけれど・・・。
現在、中学野球小僧の親父になった僕はね、
あの頃の野球部の彼らを愛しく誇らしく思うんだ・・・。


たった15歳で親元を離れた君・・・。
より高き舞台で大好きな野球をしたい一心で・・・。


強かったんだな。
Oくん・・・。
あらためて感じたよ・・・。


コマイを食べながら僕は、きみを思い出していたよ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


昨日、ある有名校での暴力沙汰が報道されていた。
とてもとてもつらくて悲しい事件だ・・・。
尊い野球の世界からね、暴力だけは排斥しなければと思う・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


Oくんが言っていた言葉を書こう。


「俺はね、先輩からされた嫌な事を後輩にはしない。
 絶対にしない。
 ・・・見ててくれ。」


事実、その後、我が母校の野球部からはね、暴力に関する事件は皆無だと聞く。
Oくんの代から20数年間だ・・・。


変革を成す心はね、
最初の一人の小さな勇気だ・・・。
小さいけれど、尊い気持ちなんだよ・・・。


29日も雨・・・。
30日も雨・・・。
きっとね、野球少年たちはがっくりと肩を落としていたんじゃないだろうか?
中止を知らせる連絡メールに書かれているでしょ?
自主練習ってさ・・・。
しっかりと目標を持ってがんばってほしい・・・。
み〜んながんばってくれい!
・・・オジサンのシアワセのために・・・。
チュッ!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ハヤトは勉強をしながらセラバンドを引いていた。器用なヤツだ・・・。
ケセラセラ・・・セラバンドだと言えるだろう・・・。
は〜い、勉強は中止っ!・・・遊ぼうぜ!
・・・父ちゃんは今、旗本退屈男になっちゃってる・・・。
「ダメだよっ、家で勉強しないと塾に入れられちゃう・・・。母さんに・・・。」
う〜む、圧迫されとるな〜、圧迫されとるな〜、青少年よ・・・。
父ちゃんと一緒にな、我が家の民主化を要求しようぜ、母ちゃんにさ・・・。
「でも・・・。」
そうだっ!デモだっ!父ちゃんは賛成のはんたい!
「父さん、悪いんだけれど下へ行っててくれない?」


・・・けっ、お邪魔しましたっ!・・・


たいくつ・・・、たいくつ・・・。
たいくつと言う名のデカイ靴・・・なんちゃってな・・・。
・・・ふう、・・・ちっとも面白くないやしゅ(内野手)って、どう?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


晴れてほしかったなぁ・・・。
今週は特に・・・。
グラウンドの野球少年たちに会いたかったなぁ・・・。
元気をたくさんもらいたかったなぁ・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


日曜日、気温は15度・・・。
僕のダジャレみたいに寒かった・・・。


「お昼ごはんですよ〜!」
カミさんの声がする・・・。


おお〜っ!ウレシイぞ!味噌ラーメンだ!
♪ドミソド〜味噌ラシド〜♪って唄いながら食べる・・・。
雨降りの寒い日はね、味噌ラーメンが美味しい・・・。


ズルズルッ・ズルズルって食べる・・・。
ちぢれ麺にスープが絡んで最高だね!


♪ドミソド〜味噌ラシド〜♪


「静かに食べなさい!」


・・・はい。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


今日見つけたシアワセは味噌ラーメン。
そしてバッティングセンター・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


今度の週末は晴れますように・・・。




僕らの地域では珍しい物だ・・・。
大きなスーパーでコマイを見つけた・・・。
買って帰り、家族で食べた・・・。
金槌でトントンと叩き、身を柔らかくして、ムシムシとむしる・・・。
むっしっし・・・。
ただ、換気をよくして食べなければ大変なんだ・・・。
家中が、思春期男子の部屋みたいな匂いになっちゃう・・・。


北海道の珍味・・・コマイ。
氷の下の魚と書いてカンカイとも呼ぶらしい。
僕にとって、それは懐かしい高校時代の味・・・。


寮で生活をしていた僕らはね、出身地は全国あちらこちらだった。
コマイを食べさせてくれたのはOくん。
北海道出身、野球部に所属する野球小僧だった。
高校時代ってね、きっと今の高校生たちだって同じだろう・・・。
いつもお腹がペコペコだった・・・。
実家から送られてくる荷物はね、大半が食糧だったんだ・・・。


もちろん、ラーメンやらカレーやら、インスタント食品がメインだったのだけれど。


その中にね、それぞれの地方特有の食べ物があり、それを友達に食べさせてあげたり
食べさせてもらったりする事が楽しみの一つだった・・・。


今でもこうやって時々食べるコマイ。
丸顔で頬っぺたが赤かったOくんを思い出す・・・。
野球が大好きで、野球がやりたくて、北海道から関西の高校へ来たんだ。
紫色のユニフォームに憧れて、ね・・・。


「これがコマイ。俺の大好物なんだよ。
 母ちゃんがたくさん送ってくれた。
 食ってみろっ!美味いっしょ?」


当時、母校では野球部の不祥事があり、白球寮は休止状態だった。
だから野球部のみんなもね、僕らと同じ一般の寮で暮らしていた。
そんなすごい野球小僧たちと寝食を共にする事が出来ていた事は、
今考えると、僕にとってもいい経験だったと思う・・・。


甲子園常連校に於ける、野球少年たちの生活。
しかも暖かい家庭を遠く離れての日々・・・。
たくさんの汗も涙も流していた彼らだったけれど・・・。
現在、中学野球小僧の親父になった僕はね、
あの頃の野球部の彼らを愛しく誇らしく思うんだ・・・。


たった15歳で親元を離れた君・・・。
より高き舞台で大好きな野球をしたい一心で・・・。


強かったんだな。
Oくん・・・。
あらためて感じたよ・・・。


コマイを食べながら僕は、きみを思い出していたよ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


昨日、ある有名校での暴力沙汰が報道されていた。
とてもとてもつらくて悲しい事件だ・・・。
尊い野球の世界からね、暴力だけは排斥しなければと思う・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


Oくんが言っていた言葉を書こう。


「俺はね、先輩からされた嫌な事を後輩にはしない。
 絶対にしない。
 ・・・見ててくれ。」


事実、その後、我が母校の野球部からはね、暴力に関する事件は皆無だと聞く。
Oくんの代から20数年間だ・・・。


変革を成す心はね、
最初の一人の小さな勇気だ・・・。
小さいけれど、尊い気持ちなんだよ・・・。