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真夜中に目覚める。
深くて静かな時間が流れている・・・。
シーンとした夜なのだけれど、不思議・・・。
静かな時間の中に、シーンとした音が聞こえる・・・。
こんな夜は、・・・アイツが来る・・・。
僕に会いに来てくれる・・・。
ちっこいちっこいハヤト・・・。
今、僕が眠ればね、僕の夢の中に現れる・・・。
「オ父サーン!キャッチボールシヨウ!」って言いながら来てくれる。
ちっちゃなちっちゃなハヤト・・・。
会いたいな。
ギュッと抱きしめたいな・・・。
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亀田興毅選手の記者会見をラジオで聴きながら、僕は不覚にも泣いてしまった。
大好きな父親を必死でかばっていた・・・。
ニュースもワイドショーも、もう、やめてくれ・・・。
ハイエナのような記者の執拗な質問が痛い・・・。
もう、許してやってくれ!
史郎さんよ。
あなたはシアワセな親父だ・・・。
たぶん、息子を持つ父親の誰もが泣いただろうと思う・・・。
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タッタッタ〜って、二階の廊下を走る音が聞こえる・・・。
小さな息子が、僕に会いに来てくれたんだ・・・。
今行くよ。
父さんのグローブを出しておいておくれ・・・。
キャッチボールしよう。
父さんとキャッチボールしよう。
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ひとつひとつのボールに想いを込めて。
父さんとキャッチボールをしよう。
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僕は、僕の親父と、キャッチボールをした事がない・・・。
でもね、思うんだ・・・。
絶対に手を怪我する事が許されない仕事をしていた親父にとっては、ね、
仕方なかったのだろうけれど・・・。
でもね、思うんだ・・・。
僕も、僕の親父と、キャッチボールがしたかった・・・。
ハヤトの試合を応援しに来てくれる僕の親父は、すっかりと好々爺だ。
昔、僕の目の前に立ちはだかった大きな男は、今、何処にいるのか?
父さん。
僕もあなたと、キャッチボールをしたかった・・・。
ハヤトに夢という言葉を贈ってくれたあなたと、
キャッチボールがしたかった・・・。
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「オ父サ〜ン!
キャッチボールシヨウ!」
小さなハヤトが会いに来る。
こんな僕なのに・・・。
小さなハヤトは来る・・・。
夢の中で僕と、キャッチボールをするために、
小さなハヤトがやって来る。
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史郎さんは、
3人の息子たちとキャッチボールをした事があるだろうか?