行ってらっしゃいの朝
激しい雨と風の昨日が過ぎ、キラキラと眩しい快晴の秋空だ。
こんなにも気持ちの良い朝は、ずいぶんと久しぶりだね・・・。
空気が洗われてまっさらになっているみたいだ・・・。
夢の中で僕とキャッチボールをした小さなハヤトは、いつの間にか消えていて、
寝癖の頭をボリボリと掻きながら居間へ降りてきたのは、現実のハヤトだ・・・。
「おはよう・・・。うぃーっと・・・。」ポリポリ・ポリポリ・・・。
寝ぼけマナコで窓の外を見ているハヤト・・・。
「うおぉ〜っ!すっげぇいい天気だ!ラッキー!」
一瞬にしてシャキっと目覚める。
良かったな、野球が出来るじゃないか・・・。
変声期を迎え、かなりドスの効いた声は、さっきまで夢の中にいたハヤトとは別人だ・・・。
図体もデカくなって、あと少しで僕は追い越されてしまいそうだ・・・。
練習着に身を包み、しっかりと野球帽をかぶり、
清瀬ポニーのバッグを下げ、自転車に乗る・・・。
「行って来ま〜す!」
いつもと同じ出発の光景がある。
僕は、シアワセだな・・・。
出掛けるハヤトの横顔を見る。
僕の夢の中に会いに来るチビすけは、間違いなくこの男だ・・・。
いつまでもね、こんな顔をして野球を続けておくれ・・・。
僕は、やっぱりシアワセだ・・・。
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野球がある・・・。
こんなにも息子が夢中になっている野球がある・・・。
僕は野球に感謝する・・・。
野球にありがとうと言いたい・・・。
野球少年を持つ父親のひとりとして、
僕は、野球を誇りに思う・・・。
僕は野球を誇る。
きっと、今朝の息子と同じように野球へ出掛けたであろう、
全ての野球少年たちのシアワセを祈ろう。
たくさんたくさん走っておいで。
たくさんたくさん投げておいで。
たくさんたくさん打っておいで。
泣いておいで・・・。
笑っておいで・・・。
みんなが野球を誇りにすればいい。
そして、元気いっぱいにね、
「ただいま〜っ!」って帰っておいで・・・。
行ってらっしゃい。
僕は、シアワセだ・・・。