その瞬間の煌き

hayatonooyaji2007-11-06

サードにはKOYO(2年生・野火止コンドルズ出身)
ショートにはニッちゃん(2年生・清瀬レッドライオンズ出身)
セカンドにはキョースケ(1年生・清瀬旭が丘出身)
ファーストにはハヤト(2年生・小山ドラゴンズ出身)


マウンドの上にいるユウタに、みんなが心の中から声を出していた・・・。
「ユウタ・・・、ゴメン・・・。
 オレたちは打たなきゃならなかった・・・。
 打って打ってオマエを助けてあげたかった・・・。」


ばち来〜い!


ユウタくんが振りかぶる瞬間、内野陣はグッと身体をかがめる。
外野からも大きな声が、力強くマウンドへ届く。


「守ってやる!ユウタ!
 絶対にオマエを守ってやる!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


最後の打者を2ストライクまで追い込んだ後、
得意のスライダーを何度もカットされた・・・。


ユウタくん(1年生・新堀ジャイアンツ出身)は、一度だけ天空を見上げて深呼吸をした。
周りを見る。
同級生のキョースケはね、飄々とした表情でユウタくんを見つめる・・・。


「大丈夫だよ。」
ニコニコと笑っていた・・・。


サード、ショート、ファーストを守る先輩たちもね、
ユウタくんの顔を見つめて笑顔を見せた・・・。


「オマエを一人ぼっちにはさせないよ・・・。
 大丈夫だよ、絶対に守ってやる・・・。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


得意の球をカットされた時の投手の苦しみがある・・・。


ユウタくんはね、ずっと信じて見つめ続けたリョウくんのミットに願った・・・。


「先輩、オレはストレートで勝負したい・・・。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


マスクの中、リョウくん(2年生・清瀬レッドライオンズ出身)は言う。


そうだな、全力のストレートを投げて来い!


オレが受け止めてやるよ。
遠慮しないで全力で投げて来い・・・!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ユウタくんの渾身のストレートが、リョウくんのミットへ!


ストライク!


そして大会は終わった・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


でもね、僕は思ったんだ。
最後の打者の表情を見ながら、ね・・・。


勝ったり負けたりする・・・。


それが本当の野球の素晴らしさなんじゃないか?って、ね・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


勝利だけを追い求める野球ならば、ポニーリーグに所属するチームである意味はない。


最後の打者になった彼の、次の対戦での打席が楽しみなんだ・・・。


勝ったり負けたりする・・・。
少年たちはね、そこから多くを学ぶ・・・。


え?少年たちが何を学ぶのか?って?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


それは、誠実なる他者の痛みだ・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


誠実なる他者の痛みを知らぬ大人たちが多い・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


少年野球からはね、しっかりとそんな心が学べるぜ・・・。


真剣な闘いの中から学べるんだ・・・。


他者の痛み・・・。
誠実な他者の痛み・・・。


他者の痛みに痛む心。


人間として、一番大切な感情なのだと僕は思う。


それを野球から学べるのだもの・・・、
少年野球は素晴らしい・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


カキーン!


夕焼けが綺麗だった今日・・・。


僕は、野球少年たちの心に想いを馳せた・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


勝ったり負けたりする・・・。


でもね、負けても学べる・・・。
勝っても学べる・・・。


とっても大切な心の持ち方。