ヒトソレゾレ

・・・ヒトソレゾレ・・・
・・・ヒトソレゾレ・・・


器用に生きる事が出来なかった子供の僕に、
僕のお母さんが教えてくれたオマジナイだ・・・。


・・・ヒトソレゾレ・・・
・・・ヒトソレゾレ・・・


器用に生きる事が出来なかった子供の僕は、
上手に生きる事が出来ない大人になってしまったのだけれど・・・。


・・・ヒトソレゾレ・・・
・・・ヒトソレゾレ・・・


上手に生きる事が出来ない大人の僕は、
器用に生きる事の出来ない子供たちを抱きしめてあげたいと思いながら生きている。


いいんだよ・・・いいんだよ・・・
・・・ヒトソレゾレ・・・
・・・ヒトソレゾレ・・・


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ビリッケな子供だった僕は、
ビリッケと呼ばれている子供たちの痛みが見える。
このマラソンのコースはね、僕たちの知らない所で誰かが作った物・・・。
他のマラソンのコースをさ、この子たちに走らせてあげる事が出来たなら、
きっと一等賞になれるんじゃないだろうかって、僕は思う・・・。


ビリッケな子供が大人になった僕は、
たぶん、大人の中でもビリッケのまんまだ・・・。
でもね、きっと、誰よりも知ってる・・・。
草や木や花の名前や、昆虫の名前を知ってる・・・。
移り変わる季節の景色の美しさを、どんな大人たちよりも知ってる・・・。


毎朝、駅に向かって走るように歩いている人たちがいる。
それは、とてもスゴイ事なんだと思う・・・。
僕は、走るように歩くなんて芸当は出来ないからね・・・。
・・・ヒトソレゾレ・・・なんだよね。
きっと、人生のマラソンのコースってさ、一つだけじゃないんだ・・・。


「・・・ヒトソレゾレ・・・
 ・・・ヒトソレゾレ・・・。」
夢の中に出てきた僕のお母さんは、まだ赤ちゃんだった弟を背負っていたから、
ずっとずっと、今の僕よりも若いんだと思う・・・。
でもね、本当にありがたいオマジナイを教えてくれた・・・。


・・・ヒトソレゾレ・・・
・・・ヒトソレゾレ・・・


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「前を向いて生きていればいいんじゃない?
 だって、人それぞれなんだもの・・・。」


今、僕の隣で、笑いながらカミさんが言う・・・。
・・・ヒトソレゾレ・・・は、僕が僕であるためのオマジナイだ・・・。