ショップ99へ・・・。
夜、ハヤトが僕の仕事部屋のドアをノックした・・・。
そう、審判講習会で習ったでしょ?野球な親父の仲間のみなさん。
アウト!をコールする時の右手のカタチだ・・・。
ドアをノックするようにアウト!が基本・・・。基礎さ、基礎のおんたけさんさ。へへっ。
って事は、ハヤトは僕にね、アウト!って言いたいのかな?
ノックの音がトン・トン・トン・・・。
は〜い、入ってま〜す!なんちゃってな・・・。
「父さん、明日の地域清掃でね、オレは時計が必要なんだけれど・・・。
父さんの腕時計を貸してほしい・・・。」
おう!貸しちゃる貸しちゃる!全部持ってけ!
ROLEXにソックリさんなRELAXってヤツがあるぞい!
・・・あれれ〜!止まってるぞ!・・・
精巧なるセイコーだってあるぞい!
・・・あれれ〜!これも止まってる!・・・
じゃあな、Gショックはどうだ!べらぼうめ!てやんでい!
・・・うわぁ、これも止まっちゃってて超ショック!なんちゃって・・・。
う〜む、全部動いてないな〜・・・。
最近はさ、携帯電話に時計が付いてるからなー。
腕時計にはご無沙汰だったもんなー。
悪いな、使える腕時計が無い・・・。
無い袖は振れない・・・。許せ!息子よ・・・。
「困ったなぁ・・・。どうしようかなぁ・・・。」
なぜ夜に言う?・・・ハヤトよ・・・。
なぜもっと早い時間に言わないんだ?
お店が開いてる時間だったらさ、電池交換に行けたじゃないか・・・。
だが、心配するな!ハヤトよ・・・。
父さんにはナイスなアイデアがあるぞ・・・。
目覚まし時計に紐を付けてさ、首にぶら下げて行けばいいんじゃないだろうか?
目立つぞ、相当目立つぞ・・・。
もしかしたら久留中で大流行するかもしれんぞ・・・。
「絶対に嫌だっ!」
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百円ショップで買うか・・・。
たしか、デジタルのヤツが売っていたような気が・・・。
だが、こんな夜の時間、ザ・ダイソーは閉まっている・・・。
ダイタイソーだろう・・・。閉店時刻は過ぎていてあたりまえな時刻だ・・・。
あ!そうだそうだ・・・。ショップ99ならまだ開いているぞ・・・。
行こう!いざ!ショップ99へ!
東久留米駅西口のショップ99はね、本屋さんのビルの2階にある・・・。
階段を昇りながら僕は唄うのさ。
♪ショップ キュッキュ キュキュキュッ ほい
ショップ キュッキュ キュッキュキュキュッ♪
「父さん、恥ずかしいから唄わないでほしい・・・。
声が大きいよ・・・。」
♪キュッキュキュキュ〜ッ♪
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結構遅い時間の駅前・・・。
忙しく行き交う人波・・・。
ふと、ある少年が立ち止まり背筋を伸ばして息子に挨拶をする・・・。
「こんばんは!」
「おうっ!」・・・ハヤトは応える・・・。
だーれ?
「学校の後輩。」
しばらく歩くと、また・・・。
「こんばんわっス!」
「おうっ!」・・・またまた格好よい返事だにゃん・・・。
あの子はだーれ?
「ポニーの新1年生だよ。」
みんな学習塾かな?
遅い時間・・・。
気をつけて家に帰るんだよ・・・。
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明日は土曜日。
でも、ハヤトは学校の地域清掃に行かねばならぬ・・・。
学校の仲間たちが選んでくれた大切な役割があるんだ・・・。
泣く泣く午前中はね、野球を休む事になった・・・。
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昼間は暖かいのだけれど、夜は寒い・・・。
そんな夜の出来事を書いた・・・。