風姿花伝

hayatonooyaji2008-03-16

今年のソメイヨシノはね、いつ開花すると思う?
蒼天を背景にして、網の目模様に見える枝を見上げながら、僕はクマおじさんに訊いた・・・。
本当は、ソメイヨシノの開花日を予想するなんてさ、とても愚かな事だと僕らは知りながら、それでもそんな会話を交わす。
春の日差しは柔らかくて暖かい。
無数の蕾が膨らみを増している。
ただ見上げながら交わす、愚かであろう会話の中にさえ、春の日差しが与えてくれるシアワセの中に僕らもいるのだと気付いた。


無数の蕾のひとつひとつを野球少年にたとえるのなら、枝のひとつひとつはチームなのかもしれないね。
そして見てごらんよ、枝は一本の幹から伸びているんだよ・・・。
一本の幹は、おそらく野球そのものだ・・・。


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風姿花伝(ふうしかでん)という言葉を僕に教えてくれた先生がいた。
学校の教室の黒板に書かれた白いチョークの色や、その時の先生の表情や、四つの文字の並び方の不思議さは、今でも強く印象に残っている・・・。
「いつの日か、この言葉が持つ意味を理解出来るような人生を歩みなさい。」
単純な文字の羅列なのだけれど、その言葉が持つ本当の意味を理解する事は難しい・・・。
ようやく、おぼろげながら、言葉の意味の輪郭だけを感じられるようには、・・・四十を過ぎた僕は、なれただろうか・・・。


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ソメイヨシノが満開になったらね、この同じ場所から写真を撮ってみようと考えている。
清瀬第2グラウンドの、ソメイヨシノの枝を・・・。


野球の風。
きっと、野球の風にだって姿があるはずだ・・・。


その姿を見られる唯一の術は、花びらたちの咲き誇る姿を見るしかない・・・。


野球の風姿花伝・・・。


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どれだけの人々が、風姿花伝という言葉の意味を探そうとしているだろう?


その人生は、深く、厚みのあるものになるだろう・・・。


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春の日差しは柔らかい。