ONESIDEGAME
小さな外野手の男の子の頭上を 無情にも打球は越える
フェンスの無い草っぱらのグラウンドを ボールはコロコロと転がる
次から次へ ホームベースを駆け抜けるランナー
小さな外野手の男の子は まだボールを追いかけている
ワンサイドゲーム
心ない大人たちのしかめっ面
ワンサイドゲーム
コロコロと転がるボールを追いかける男の子の背中を
愛しいと思うのは僕だけか?
風に吹かれハタハタと揺れる彼の背番号を
眩しいと感じるのは僕だけか?
ようやくボールに追いついて 振り向いた男の子の目には 涙が光っていた
彼は仲間に向かってボールを投げた後 拳で涙をゴシゴシ拭った
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だが、僕は思うのだ。
僕を含め、世の中のオジサンの99.9%は、その小さな外野手の男の子のようなものだ。
絶望的な得点差の試合を戦っていて、センターにぽつねんと立っているのだ。
後ろに大きく逃してしまったボールを追いかけているような人生だ。
世の中のオジサンの99.9%は、間違いなく、そんな人生を走っているのだ。
懸命に走ってボールを追いかけているのだ。
決してあきらめる事なく・・・。
ゼェゼェと息をしながら、ボールを追いかけているのだ・・・。
格好悪いのだ・・・。
僕を含め、世の中のオジサンの99.9%は、格好悪いのだ・・・。
格好悪いけれど、僕らはボールを追いかけるのだ・・・。
本当は、誰もが涙と鼻水で、グジャグジャな顔をしてる・・・。
だが、オジサンたちはね、グジャグジャな顔を絶対に他人に見せてはいけないんだ・・・。
男はつらいよ、みんなみんな寅さんなんだよ、おいちゃんよ・・・。
格好悪くっても走る。
格好悪くってもボールを追いかけている。
格好悪い事って、実はね、最高に格好いいんだ・・・。
いつか必ず解ってもらえるのだ・・・。
これでイイのだ。
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涙がこぼれそうになったら
深呼吸をすればいい
ワンサイドゲーム
しかめっ面だけは、絶対にするまい
ワンサイドゲーム
なぜなら、あの外野手の小さな男の子は、僕らなのだから・・・。
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忘れられぬ思い出がある。
小学校3年生の時の息子たちのチームは、
34対0で負けた事がある。
悔しがるような得点差ではないけれど、それでも息子たちは泣いていたっけ。
誰だってね、そんな経験をしてる・・・。
誰だってね、将来そんな人生を歩まなければならないんだ・・・。
愛しいぞ!野球小僧たちよ!
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オジサンたちに愛をくれ!