カキーンでシアワセ

家中あちらこちらにセットした目覚まし時計が鳴る。
ジリリリリもあれば、ピピピピピもある。
それから、ハイホーのメロディもある。
午前5時半、ハヤトと僕は起床する。
姉ちゃんを起こさぬように手分けをして、目覚まし時計たちのスイッチをオフにする・・・。
かなり緊張して、俊敏な動きが求められる作業なのだが、これでバッチリ目が覚める・・・。
雨戸を開けると快晴。
絶好の野球日和だった。


「ラッキ〜!いい天気だっ!」
ハヤトはうれしそうに笑う・・・。
この顔を見ればシアワセな気分になれる・・・。
良い事も悪いこともね、生きてりゃこそ・・・だ。
よしよし、生後158ヶ月の笑顔がここにある・・・。
中学3年生の野球のシーズンは始まっている・・・。


あらためて言おう、おはようさん!


カミさんは夜勤で家にいられない朝だ・・・。
きっと、切なくて心配でたまらないだろうな・・・。
「おはよう。きちんと起きれてる?」
忙しいであろう勤務の中の休憩時間に電話が来る・・・。
我が家の場合、お父さんがいるから安心・・・ではない・・・。
むしろ、お父さんと一緒だと心配・・・だなんて思われているフシがある・・・。
おうおう、なんてったって野球に出掛ける朝なんだもんね、
目覚まし時計なんて不要の勢いで起きてるよ、僕もハヤトも・・・。
電話、ありがとさん・・・。


朝7時に集合だから、え〜っとね、時間を逆算して6時半に出発だね。


「もう準備も昨日のうちに出来てるし、朝飯食べて体温チェックするだけだからさ、父さんは寝ててもいいよ。」
そんな事をハヤトは言う・・・。


だが、それだとハヤトは一人になってしまうのだ。
やる事は無くてもな、とりあえず僕も起きているのだ。
起きてただ、オロオロとだけ、格好つけたいのだ。
これでイイのだ。


自転車に乗り、ハヤトは出掛けた・・・。
野球へ、・・・清瀬第2グラウンドへ・・・。


その様子だけで僕はうれしいし、シアワセだ・・・。
親父なんてね、誰だってそんなものだ・・・。


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この週末、僕は野球をガマン・ガマン・・・。
沖縄へ行く分、今のうちに働かなければなりませぬ・・・。
ガマン・ガマン・ガマン・・・ガマン・・・。
ガマン・ガマン・ガマン・・・アマン・・・愛しき野球よ・・・。


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テレビでね、甲子園の開会式を見た。
やっぱりね、母校のユニホームが一番格好良く見えちゃう・・・。


それからそれから21世紀ワクにワクワク・・・。


ガンバレガンバレ・・・息子たちよりちょびっと大きな野球少年たち・・・。


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あっちでカキーン!
こっちでカキーン!
どこでもカキーン!
みんなでカキーン!


おじいちゃんもカキーン!おばあちゃんもカキーン!
お父ちゃんもカキーン!お母ちゃんもカキーン!
赤ちゃんもカキーン!お兄ちゃんもカキーン!
お姉ちゃんもカキーン!ダックスフントもカキーン!
カキーン!カキーン!


球春。
み〜んなカキーン!でシアワセ。