大切に使ってくれてありがとう。
考えてみれば、僕と一緒にスポーツ用品店に行くなんて、ハヤトにとっては久しぶりの事だ。
最近はもっぱら、チームメートと電車に乗って、飯田橋にあるベースマンばっかりだったものな・・・。
でも、それはね、とっても良い事だと思うんだ・・・。
行き帰りの電車の中で仲間と交わす野球の話題ってさ、とっても参考になるだろうからね・・・。
だから今日は特別・・・。
急がなければならない買い物だもんな・・・。
スパイク・・・。
28センチ・・・。
現在使用している物の修理をお願いして、
同じ大きさの新しい物も買い求めた・・・。
「高いなぁ・・・。父さん、・・・悪いね・・・。」
何を言う・・・。
ずっと大切に手入れして使ってくれているし、元気いっぱいにグラウンドを駆けてくれている。
父ちゃんはなぁ、ようやく正しいお金の使い方が解ってきたところだ・・・。
そうさ、人よりそれに気付くのが遅かったけれどな・・・。
これは、無駄遣いじゃない・・・。
父ちゃんにそれを教えてくれたのはオマエだぜ・・・。
お〜い、お店のお兄さん・・・。
この靴おひとつくださいな・・・。
「・・・父さん、・・・ありがとう・・・。
成長したね、・・・父さん・・・。
ありがとう、・・・足は臭いけどね。・・・。」
って、一言余計だぞ・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
スパイクはアシックス・・・。
ちっちゃな頃からずっとハヤトはアシックス・・・。
これからもずっと、元気いっぱいにグラウンドを駆けておくれ・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
スポーツ用品店の中に貼ってあるポスターを見る。
イチロー選手がモノクロで写っているミズノの広告なのだけれど、
それが、すごくいい・・・。
そこに書かれている文章を読み、なんだか涙が出そうになった・・・。
おそらく、どこのスポーツ用品店さんでもね、現在貼られていると思う・・・。
どうか、野球少年を持つ親父の仲間たちよ、ご一読あれ・・・。
きっと、ちいさな野球少年たちに向けてなのだろう、すべて平仮名で書かれたメッセージだ。
野球の道具を大切にして・・・と、ある・・・。
試合の中で何か良い事があると信じて・・・と、続く・・・。
そうなんだよ、
そこに書かれているメッセージはね、真実なんだ・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
野球少年たちよ、どうか野球の道具を大切にしておくれよ・・・。
大切にしている道具はね、大切な場面でさ、必ず君の想いに応えてくれるんだ・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「いいか?せっかく父ちゃんや母ちゃんが苦労して買ってくれたグローブだ・・・。
大切に使わなきゃダメだぞ・・・。
グローブは、こうやって磨くんだ・・・。」
「ハイ!ワカリマシタ!」
ギュッ・ギュッ・ゴシゴシ・・・。
ちいさな野球少年・・・。
君のグローブは宝物だぜ・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ハヤトのグローブは、高価な物ではない・・・。
ポニーリーグに入った時に買った、硬式用の一番安い物だ・・・。
でも、そのグローブを買った時、本人は本当に喜んでいた・・・。
毎日のように手入れをして、大切に使ってくれている・・・。
紐とかさ、ポケットの部分の革とかさ、修理に出しながら愛用している・・・。
値段なんて付けられない宝物みたいなグローブになった・・・。
そのグローブがハヤトの想いに応えてくれた場面を、この2年間で何度か目にした・・・。
ミズノの広告に書かれている言葉。
それは、本当に真実なんだ・・・。
ちいさな野球少年たちよ、どうか野球の道具を大切にしておくれよ・・・。
本当だよ、必ず応えてくれるからさ・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
少年野球・・・。
そこで学んでいるのはね、子供たちだけじゃない・・・。
子供たちの姿からさ、本当に学ばせてもらっているのは、きっと僕ら親父たちだ・・・。
最近、ふと、そんな事を思う・・・。